J1神戸フィンク監督「優勝はおそらくない」”白旗”発言の是非
敗色濃厚だった後半アディショナルタイムに2-2の同点に追いつき、FC東京から勝ち点1をもぎ取った劇的な展開の余韻がまだ色濃く残っていた。だからこそ、ヴィッセル神戸を率いるトルステン・フィンク監督が、試合後のオンライン会見で発した言葉は大きなギャップを伴っていた。 「現実的に見れば、この時点でこの勝ち点数となると、リーグ優勝はおそらくないと思ってもいい。なので、ここからはできるだけいい順位でリーグ戦を終えられるようにして、このままクラブの考えでもある若手の上達に集中していきたい」 ホームのノエビアスタジアム神戸で、12日に行われた明治安田生命J1リーグ第16節。クラブ史上で初めて挑んでいるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)との兼ね合いで、川崎フロンターレとの第24節を前倒しで消化しているヴィッセルは、シーズンの折り返しとなる17試合目を終えた。 FC東京とのドローを含めて、4勝8分け5敗の勝ち点20ポイントは暫定で11位タイ。アウェイで3勝4分け1敗の星を残しているのに対して、ホームでは1勝4分け4敗。唯一の白星が7月18日の清水エスパルス戦までさかのぼるなど、典型的な“外弁慶”状態に陥っている。 順位表を見上げていけば、ヴィッセルよりも消化試合数がひとつ少ないフロンターレが、13勝2分け1敗と異次元にも映る強さを発揮して首位を独走。勝ち点が41ポイントとヴィッセルの倍以上に達している状況も踏まえて、逆転はほぼ不可能とするフィンク監督の白旗発言が飛び出した。
しかも、昨年6月からヴィッセルを率い、今年元日の天皇杯決勝を制してクラブに初めてタイトルをもたらしたドイツ人指揮官は「今年のリーグ戦はおかしなものだと思う」と言及。新型コロナウイルス禍で再編成を強いられ、過密状態となっている日程にも不満の矛先を向けている。 「現時点でフロンターレとすでに2度対戦している。フロンターレと2度戦うのと他のチームと2度戦うのとでは、結果もおそらく違ってくる。普通のリーグ戦ならばもちろんありえないことだと思う」 フロンターレとは先月26日にホームで第24節を戦って2-2で引き分け、まだ記憶に新しい今月9日の第15節は敵地・等々力陸上競技場で2-3の逆転負けを喫している。しかし、本来は10月24日に予定されていた第24節は、前述したようにACLによる不可抗力と受け止めるべきだ。 アジアでも猛威を振るった新型コロナウイルスの影響で、ACLはグループステージの途中から中断を強いられている。アジアサッカー連盟(AFC)は7月に入って、グループステージの残り試合と決勝トーナメント1回戦までを、10月16日から11月4日にかけて中立地で集中開催すると発表した。 JリーグはAFCの発表を受けて、ACLに出場している横浜F・マリノス、FC東京、そしてヴィッセルの日程を再編。集中開催時期と重複していたリーグ戦が前後の予備日に振り分けられたなかで、ノエビアスタジアム神戸の空き状況なども踏まえて先月26日に前倒しされていた。 フィンク監督としては首位との直接対決が、後半戦に設けられていない状況を指摘したかったのだろう。ただ、ノエビアスタジアム神戸の指定管理者を務めるヴィッセルが、フロンターレ戦の前倒しを承認したことを忘れてはいけない。日程に不満を漏らすのは、道理が通らないと言わざるをえない。