40代に多い乳がん 周囲の人はどうサポートすべきか…言わないほうが良いことも
手術が不要になる可能性も
――なるべく切除部分が少なくなるように進歩してきたという乳がんの手術ですが、今後は手術が不要になったりはしませんか。 可能性はあります。今はまだ臨床試験の段階ですが、抗がん剤治療で乳房のがんが消失した場合、手術は不要になるかもしれません。また、がんが比較的おとなしくて乳管にとどまっている場合であれば、女性ホルモン(エストロゲン)がつくられるのを抑えたり、エストロゲンががん細胞と結合するのを防いだりする「ホルモン療法」のみを行い、手術をしない選択肢を取るようになる可能性があります。 切除する範囲も、以前は乳がんが転移することが多い腋窩(えきか)リンパ節を含めて切除することが多かったですが、近年は抗がん剤治療でリンパ節への転移が消えた場合などは、切除しないケースが増えつつあります。 ――そうなると、患者への寄り添い方も変わるでしょうか? 手術をしない場合でも、抗がん剤治療やホルモン療法で治療は長期になりますし、治療中は患者さんの体調や気持ちの変化も大きくなります。患者さんによって違うので寄り添い方に正解はありませんが、病気を前向きに治療していこうという時に、家族や親しい人の支えは大きいものです。 家事や育児、介護、仕事と現実的に対応しなければいけないことが多くても、周囲の人に頼るのが苦手な患者さんもいます。手助けしようとしていざこざやけんかも起きるかもしれませんが、がんという危機に陥った時に、治療の時間をともに過ごし、一緒に乗り越えていくことで深まる絆もあると思います。
おおにし・たつや
2003年、慶応大学医学部卒業。同大病院を経て、16年に国立がん研究センター東病院へ。19年から乳腺外科長。がん患者と寄り添うすべての人をサポートする同病院「LIFE支援センター」のセンター長も務める。