約3億年前に生きた自動車サイズの「コダイオオヤスデ」、全体像が明らかに
コダイオオヤスデ(Arthropleura:アースロプレウラ)は、古代の地球を這い回っていた、史上最大級の節足動物だ。 石炭紀(約3億5920万~2億9900万年前)に生息し、英国、フランス、ドイツ、米国で化石が発見されているが、これまでは、関節のある外骨格の一部と、3点の不完全な標本のみが知られていた。2021年に、長さ約75センチメートルの大きな断片が発見されたが、元の個体の体長は2.7メートル、体重は50キログラムほどだったと推定されている。 そして最新の研究で、その全体像が初めて正確に復元された。 研究チームは、物体の内部をX線で可視化するマイクロCT技術を用い、フランスのモンソー=レ=ミーヌで発掘された化石の3次元画像を作成した。石炭層で発見されたこの化石は、約3億750万~2億9900万年前の石炭紀後期のもので、保存状態が非常に良い。死後すぐに、粒子の細かい湖底の堆積物に覆われたためだ。 研究チームが調べた標本は、わずか数センチメートルの大きさだ。おそらく幼体で、部分的に堆積物に閉じ込められていた。堆積物を取り除くことは、標本を傷つけたり、化石と堆積物の接点に保存されている解剖学的特徴を失ったりするリスクを伴う。X線を使えば、化石に触れることなく研究できる。 フランス、ビルールバンヌにあるクロード・ベルナール・リヨン第1大学の古生物学者で、研究論文の筆頭著者であるミカエル・レリティエはAP通信のインタビューで、「ヤスデの体と、ムカデの頭を持っていることがわかった」と説明している。 コダイオオヤスデは、現代のヤスデ(ほとんどの体節に、関節のある脚が2対ずつ付いており、体と頭はミミズに似ている)と、ムカデ(すべての体節に1対ずつの脚が付いており、体は平ら)の解剖学的特徴を併せ持っている。体はヤスデの特徴を持っているが、復元された頭は、節のある短い触角と大顎があり、現代のムカデに近い。 研究チームはこの観察結果に基づき、コダイオオヤスデは、ヤスデとムカデの最後の共通祖先と密接に関連していると主張している。 同じ時代に生息していた他の無脊椎動物の巨大化(羽を広げると70センチメートルを超えるトンボなど)は、大気中の酸素濃度がピークにあったためだと考えられていたが、コダイオオヤスデの化石は、このピークに達する前のものであり、酸素濃度だけでは説明できないことを示唆している。 石炭紀は温暖湿潤な気候で、ほとんどの大陸が深い森に覆われていたため、小さな動物の大型化が可能だったのかもしれない。 コダイオオヤスデは、約2億9800万年前のペルム紀に絶滅した。原因は不明だが、気候変動(ペルム紀は、非常に暑く乾燥していた)や、初期の爬虫類などとの競争が理由として考えられている。
David Bressan