どうなるエネルギー基本計画 気候政策シンクタンク代表が指摘する「危機感のなさ」
省庁主導の政策決定プロセスに「建設的な議論できない」と異論
──政策決定プロセスへの疑問の声も上がっています。2035年度の温室効果ガスの削減目標を議論する別の審議会では、委員の一人で新電力「ハチドリ電力」社長の池田将太氏がより意欲的な目標を議論すべきではないかと書いた意見書を提出しようとして環境省に止められたことを明かして注目されました。意見書では、目標の引き上げを求める各委員の意見が十分に集約されず、建設的な議論ができていないことも指摘されていました。 今回に限らず、経産省や環境省など省庁間の調整で実質的なシナリオをつくって、審議会の委員はそれにお墨付きを与えるだけ、というやり方が何十年も続いています。シナリオと違う意見の委員がいても、議事録に意見を残すのが精いっぱいという状況です。これでは本当に必要な政策転換を起こしようがありません。 省庁側が選ぶ委員の人選にも偏りが見られます。私たちが2024年4月に公表した第6次エネルギー基本計画の政策決定プロセスの調査では、エネルギー基本計画の15の主要な会議体の委員はいわゆる重厚長大産業などエネルギー多消費産業の企業関係者が多く、年齢は50~70代が中心。男性の割合が75%を超えるなど明らかな偏りが見られました。 こうした人たちの多くは、化石燃料や原子力など既存のシステムからの脱却に慎重なスタンスです。もっと幅広い産業の関係者や、若者や女性などがもっと参加するプロセスがあったら、議論の方向性も違ってくるはずです。 多くの人が蚊帳の外に置かれることで無関心になってしまっている一方、国民が無関心だからこそ政治家もこうした問題を正面から扱おうとしないことも課題です。気候危機は命にかかわる問題で、気にしている人たちも実際にはたくさんいる。私たちが、自分ごととしてそれぞれの思いを声にして届けることも重要です。 今回、池田さんの問題提起をきっかけに、一つの風が起きています。審議のプロセスでは国民の声を幅広く拾い上げるよう、検討してほしいです。
朝日新聞社