どうなるエネルギー基本計画 気候政策シンクタンク代表が指摘する「危機感のなさ」
再エネ拡大は野心的試算も俎上に載せるべき
──その再エネについては、今回の計画で初めて「最大の電源」と位置づけられるシナリオが検討されていると報じられました。現行計画の再エネの電源構成は2030年度に36~38%ですが、さらに増やして火力を上回る数字になりそうです。2040年度の再エネの比率を4~5割にする方向で調整されているとも報じられています。 再エネが現在の火力の41%を超えて一番大きな電源に位置づけられることはほぼ間違いないでしょう。ただ、それだけでは十分とは言えません。 2023年のG7サミットでは、2035年までの電力システムの完全または大部分の脱炭素化に、日本も合意しています。 しかし、12月3日の基本政策分科会で提示されたシンクタンクなど6つの機関による試算では、温室効果ガス排出削減水準を定めた上で、2040年度の再エネの電源比率は43~60%と非常に低い数値が出されました。 原子力の2割到達が困難なことを考えても、非常に消極的な数字だと思います。たとえばドイツは、2035年に脱炭素電源100%を目指しています。 ──複数の機関が試算して出したのがその数字となると、「そのあたりが限界なのか」とも思えてしまいそうですが。 今回の試算ではまず、温室効果ガスの削減目標が低く決め打ちされていることに違和感があります。太陽光や風力を導入しやすいような市場設計をどう実現するか、省エネの効果をどれくらい考慮するかといった要素によって数字はかなり変わってくるはずなのに、不可思議です。 私たちが昨年から共同で研究に取り組んでいるアメリカのローレンス・バークレー国立研究所は、バイデン政権の脱炭素政策の下地になった分析シナリオを出した研究機関です。この研究所が2023年3月に公表した研究結果では、日本は原子力の比率を政府計画通りに2割で据え置いたとしても、2035年に再エネを70%導入できるとしています。 費用最小化のシナリオの結果です。再エネが多く導入される分、温室効果ガスの排出はもっと削減できます。本来はこういった試算も議論の俎上(そじょう)に載せた上で、比較検討すべきではないでしょうか。 ここまでの基本政策分科会の議論を見る限り、再エネを今後どこまで増やすかという議論はほとんどされていません。気候変動対策の緊急性に向き合わず、見たくないものは見ないようなやり方で進んでしまっているように感じられます。