どうなるエネルギー基本計画 気候政策シンクタンク代表が指摘する「危機感のなさ」
再エネは「適地が少ない」「高い」は本当か
──「日本は適地が少なく再エネに適さない」という意見をよく目にします。実際、メガソーラー開発による景観破壊のトラブルも起きています。「コストがかかる」という見方もまだ根強いように思います。今後も増やしていけるのでしょうか。 日本に再エネの適地が少ないなどということはありません。太陽光発電協会による「2050年ビジョン」では、2050年に現在の5倍以上となる400GWの太陽光発電を導入するという野心的な目標が達成可能であると試算されています。 私たちの推計では、この規模で導入された場合でも、太陽光パネルが占める割合は国土面積の約1%に過ぎません。建物の屋根面積の10%に太陽光パネルを設置し、農地面積の7%にソーラーシェアリングを導入するなど、適所を活用することで十分に電力需要を満たすことができます。 これから導入が本格化する洋上風力発電については、日本は世界有数の適地と言われています。山林を切り崩してメガソーラーをつくらなくても、地域の人々と共生するかたちで再エネを増やしていけると考えています。 コストについては、世界全体で確実にコストが下がってきているのが再エネで、日本においても最も安い電源になりつつあります。火力発電は安いイメージがあるかもしれませんが、化石燃料の輸入のために年間約30兆円という巨額のお金が海外に流出しています。 ウクライナ危機などで燃料費が高騰し、政府が補助金を出すことで電気代を抑えているのが現実です。エネルギー安全保障の観点からも、再エネを増やすことでエネルギー自給率を高めた方が良いと考えます。 ――日本のCO2排出量は世界5位で全体の3%程度ですが、排出量が世界最大の中国は全体の約30%を排出しています。日本がいくら頑張っても、中国が対策をとらなければ意味がないという意見もよく聞きますが、これについてはどう思いますか。 確かに、日本だけが対策をしても気候変動は止められません。しかし、中国もしたたかなので、再エネを大量導入して石炭火力の割合を徐々に減らしながら、太陽光パネルや風力発電、蓄電池、EVなど脱炭素技術の分野でどんどんマーケットを広げています。 現状にあぐらをかいていると、これからの脱炭素技術をめぐる国際競争で負けてしまう。日本が今進めている水素・アンモニア混焼などの化石燃料を基本とした高コストな技術で再エネや蓄電池に太刀打ちできるのか、疑問に思います。 日本は東南アジアなどに経済面で大きな影響力を持ってきましたが、化石燃料を基本とした高コストな技術に固執していては、大きなビジネスチャンスを逃してしまいます。