天の川銀河へ近付くように移動している渦巻銀河「M90」 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影
こちらは「おとめ座(乙女座)」の方向約5500万光年先の渦巻銀河「Messier 90(M90)」です。銀河円盤を覆うように広がる赤茶色の煙のようなものは、塵が濃く集まっているところ。その隙間からは若く高温の青い星々からの光が見えています。 今日の宇宙画像 M90は「おとめ座銀河団」に属していますが、銀河団から脱出する経路を辿っていると考えられていて、偶然にも天の川銀河へ近付くような方向に進んでいることが知られています。現在観測されている状態から3億年ほど前には銀河団の中心付近を通過したと考えられていますが、この時に銀河団の内部に存在する銀河団ガスを向かい風のように受けたことで、大量のガスが剥ぎ取られてしまったとみられています。 周囲にハローを形成しているガスはもはや星形成には利用できず、M90は数十億年後には渦巻銀河と楕円銀河の中間的な性質を持つレンズ状銀河になると予想されています。人間の感覚からすれば永遠に変わらないように思える銀河も、この広大な宇宙を移動し、別の姿へと進化する存在なのだということをM90は物語っているかのようです。 この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データをもとに作成されたもので、“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として、欧州宇宙機関(ESA)から2024年10月14日付で公開されています。 Source ESA/Hubble - A yet better view
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部