ビットバンク、東証上場にこだわる廣末社長の胸の内
トランプ氏の大統領選勝利をきっかけに、ビットコインが高騰して10万ドルを超えるなど、暗号資産には強い追い風が吹いている。だが日本では金融庁による規制の見直し、DMMビットコインの廃業、さらには業界再編が囁かれ、国内は「2社でいい」との発言がニュースにもなった。2025年の暗号資産業界はどうなっていくのか。今年創業10周年を祝ったビットバンクの代表取締役社長CEOであり、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)理事、JCBA(日本暗号資産ビジネス協会)会長の廣末紀之氏に聞いた。 ◇◇◇
暗号資産BtoBビジネスへの準備
──最近、ドジャースの山本由伸投手を起用したCMをテレビでよく見る。CMの反響は。 廣末氏:今年の春に山本選手と契約をして、シーズン前に撮影した。その後、夏は相場も低迷していたのでタイミングを見計らっていたが、山本選手が怪我から復帰して、ドジャースも勝ち上がって、ワールドシリーズ進出を決めた。非常にタイミングが良かった。山本選手にとっても、単独出演としては初の全国放送のCMで、アリゾナでの撮影は非常に協力的に進んだ。 ──トランプ氏が次期大統領に当選したことで、暗号資産市場は非常に盛り上がっている。予想は難しいと思うが、この状況はいつまで続くと考えているか。 廣末氏:今年の相場のカタリストは、ビットコインETFと半減期、米国の金融緩和、それと大統領選の4つがあげられる。通常、ビットコイン相場が着火するタイミングは、半減期の概ね半年後ぐらい。それが経験則としてある。今年は、米大統領選で共和党が暗号資産を支援する姿勢を打ち出して、新たなトリガーにもなった。我々もそうした予測のもと、信用取引の開始やCMなど、いろいろ準備していた。 相場の先行きについては、あくまでも個人的なものだが、通常半年ぐらいは好調を維持し、来年上期ぐらいまでは上下はありつつも好調だと考えている。しばらくはサマーシーズンが続き、そこからまたオータム、ウィンターがあるだろう。オータム入りのきっかけがあるとすれば、トランプ氏の政策によって米国でインフレが進み、金利が引き上げられて、マーケットからお金が吸い上げられたときに、もしかしたら変化点が来る可能性がある。米国の経済指標は堅調で、当面はそうした機運にはならないと見ているが、過去、アメリカではボルカー氏がFRB議長だった「ボルカー時代」にインフレに直面している。来年半ば以降は要注意だろう。 ──次のオータム、ウィンターに向けて考えていることは。 廣末氏:一番にやらなければならないことは、オータム、ウィンターのときに「次のサマー」の仕込みをしておくこと。まずは取引所をさらに強化しなければいけない。不足していることがまだある。積立、ステーキングの銘柄数、デリバティブなど、ユーザーからの要望が届いている。今年については、オリコン顧客満足度ランキング「暗号資産取引所 現物取引」においてNo.1を獲得したこともあり、サービス品質は、一定の支持をいただいていると思っているが、海外も含めて一番良いサービスづくりを進めていきたい。 今、非常に大きなトピックとしては、金融庁が「暗号資産の再定義」を検討していることがある。具体的には、規制のフレームが資金決済法から金商法(金融商品取引法)に大きく変わる可能性がある。この背景にあるのが、暗号資産の個人の分離課税の問題、ビットコインETFの登場、そしてRWA(現実資産)を含めた金融商品化の進展だ。 そして、こうした動きを踏まえて2025年以降、非常に顕著になってくると考えられるのが、暗号資産のBtoBビジネスだ。金融機関をはじめとして、暗号資産のBtoBビジネスのフレームが整ってきて、関心がどんどん高まってくるだろう。我々としては、JADAT(日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社)を立ち上げて、こうした動きに備えている。「次のサマー」に花が咲くように進めている。