富士山噴火の「避難計画改定」で大注目「富士山の側火口」の列に隠された「重大な意味」
2023年3月、国や山梨、静岡、神奈川の3県からなる「富士山火山防災対策協議会」は、富士山噴火に備えた避難計画「富士山火山広域避難計画」の全面的な改定を発表しました。(山梨県による「富士山火山広域避難計画」) 【画像で…火口から流れ出る溶岩流】「富士山が噴火した」ときの「衝撃的な被害規模」 改定された避難計画では、「逃げ遅れゼロを目指し、安全に避難できる可能性を最大化する」ことを目的とし、避難対象範囲や効果的な避難体制、避難手段について再検討されています。 「少しでも早く、遠方に避難する」ことを想定していた従来の避難計画ですが、これは爆発を伴う噴火が続いたとされる宝永噴火(1707年)を踏まえたものでした。それに対して、今回の改定は、「複数の火口から大量の溶岩が流れ出た」と考えられている貞観噴火(864~866年)も念頭に置いたものとされています。 しかし、「複数の火口」と言いますが、富士山にはどれくらい火口があるかご存知ですか? 今回の中間報告をより深く理解するために、富士山の火口について見てみます。『富士山噴火と南海トラフ』の著者で、京都大学名誉教授の鎌田 浩毅さんの解説でお届けします。 *本記事は『富士山噴火と南海トラフ』(詳しい内容はこちら)から、再編集してお届けします。
富士山の火口のできかた
富士山には溶岩を流し出した火口がたくさんある。その中でも山頂は、やはり最大級の火口だが、このほかにも中腹に多くの穴が開いているのをご存じだろうか。 たとえば南東側には、宝永火口という巨大な火口がある。300年前の宝永噴火で江戸まで火山灰を降らせた直径1.3キロメートルの火口だ。それは、富士山の火口でも最大の直径である。さらにその下にも、小さな火口が南東方向へ連なっている。 富士山の北側でも、同じように火口がたくさんできている。こちらは北西方向に小規模の火口が並んでいる。ちょうど山頂をはさんで南東と北西という反対方向に、小さな火口が密集していることになる。 これらの火口は「側火口(そくかこう)」と呼ばれている。つまり、富士山のマグマは山頂の大きな火口と山麓にある小さな側火口から出てきたのだ。