富士山噴火の「避難計画改定」で大注目「富士山の側火口」の列に隠された「重大な意味」
側火口の列には重大な意味が隠されていた!
しかし、側火口はまったくランダムにできているのではなく、地下にある主要な割れ目に沿ってできる。それが富士山の場合では、北西─南東方向に偏ってできやすいのだ。 その理由は、富士山の地下にかかっている力にある。富士山を含む関東南部には、フィリピン海プレートと呼ばれる岩板が沈み込んでいる。その沈み込む方向が、まさに北西─南東方向なのである。この方向に力が加わり、地下深部で割れ目ができやすいのである。甘栗を親指と人差し指でつまんで割るときのように、押した方向に割れ目ができるのだ。 世界各地の古い火山では、地上に残った板状の通路を見ることができる。板状の火道をマグマが満たしたまま固まり、長い年月のあいだに周囲の軟らかい部分が削られて露出するのである。たとえば、阿蘇山の東の端にある根子岳の山頂には、こうして残った板状の火道の跡がある。 これは、火道内で冷え固まった溶岩が周囲の地層よりも硬いので、長年の侵食に耐えて残ったものであり、岩脈とも呼ばれている。 ◇ 火口といってまず思い浮かべるのは、流れ出る溶岩でしょう。今回の避難計画でも、貞観噴火(864~866年)での大量の溶岩流出が改定の根拠となっています。溶岩流の危険については、以前の記事、〈「溶岩流」果たしてどこまで到達するのか…「富士山が噴火した」ときの「衝撃的な被害規模」〉で詳しく解説しています。 噴火口から流れ下るものには、溶岩のほかにも火砕流や、降り積もった降下物(降灰)などによる泥流といったものもあります。とくに火砕流は、摂氏500度を超す高温とともに、時速100kmというものすごい速度で襲ってくるため、被害も甚大です。1991年から4年ほどの間にかけて起こった雲仙・普賢岳の火砕流での被害について記憶されている方も少なくないでしょう。火砕流や泥流の危険性についての解説も、ご紹介していきたいと思います。 富士山噴火と南海トラフ――海が揺さぶる陸のマグマ
鎌田 浩毅(京都大学名誉教授)