西武・榎田対阪神・藤浪ドラ1対決。古巣の虎ファンから「帰ってきて」の声
開幕直前に阪神から西武にトレードされた榎田大樹(31)が3日、メットライフドームで行われた交流戦の古巣・阪神戦に先発、7回を投げ5安打3失点と粘ってリードを守りプロ8年目でキャリアハイとなる5勝目を手にした。一方の阪神の先発は2軍落ちしていた藤浪晋太郎(24)だった。守備の乱れにも足を引っ張られ6回途中で降板、結果的に6安打7失点(自責4)で負け投手となったが、復活の予感をさせる投球内容。榎田は2010年のドラフト1位(東京ガス)で、藤浪は2012年のドラフト1位(大阪桐蔭高)。違うユニフォームでの対決となったドラ1位対決は見ごたえのある勝負だった。
勝ったのは榎田だった。2度目の本拠地お立ち台。 球場の半分を黄色に染めていた阪神ファンは帰路を急いだが居残った人達からのブーイングはなかった。 「まさか阪神に投げるとは。この姿を阪神ファンの皆さんにも見てもらったらいいなと思っていたので良かったです」 声援の中には「阪神に帰って来いよ」という声もあった。 「それに対しては何も言えないですけど」と榎田も苦笑いを浮かべた。 「福留さんや鳥谷さんらには力が入ってやっぱり投げにくかった」 3回、4回と走者を得点圏に背負いながら粘る。 5回には「9人目の野手」として守りで攻めたーー。阪神の日本一監督、吉田義男氏が「守備でも攻めることができまっせ」と語っていたことがあるが、榎田は、まさに守りで攻めた。 先頭の鳥谷に死球を与え、大山にライト前を打たれて無死一、二塁。2点を追う阪神ベンチは、梅野にスリーバントをさせてきたが、三塁側に転がったゴロをマウンドをかけ降りて処理した榎田は、炭谷の一塁指示に、一瞬、躊躇したが「ここが勝負」と三塁へ矢のような送球を送った。最初の判定はセーフ。無死満塁の絶体絶命のピンチになるところだったが、辻監督がリクエストを要求。判定が覆った。 さらに一死一、二塁とピンチは続くが、北條のピッチャーゴロをさばくと迷わず背中越しの二塁へ送った。これもクロスプレーとなったが、同点の走者を二塁へ置かないという榎田の攻める守りだった。 「守れれば自分を助けるプレーになる。ピッチャーゴロを二塁へ投げたところなんかは体が覚えているというか準備ができているね。センスが伺える」と辻監督が試合後、絶賛したイニングだ。ここも粘りきった。 「平常心で投げたつもりが、どこかで気負っていたんでしょう。5回でバテました。いつもより疲れた」 疲れから6回に制球が乱れ、福留、糸井の主軸に連続四球で無死一、二塁。自滅パターンで走者を背負うと、対戦を熱望していた同期の中谷に、外の変化球を強引にレフトへ引っ張られた。2点タイムリー二塁打。そして、昇格したばかりの陽川にもライト前へ。いずれも変化球が甘く入った。昨秋からフォーム改造に取り組み成果が出ているが、ファーム時代にずっと近くで見られてきた元同僚のタイミングを外すのは容易ではない。 「中谷からはひとつ三振とったんですけどね。陽川はファームで一緒に苦労した仲……まあ、むこうが成長したということにしておいてください。これからもお互いに切磋琢磨していければ」