西武・榎田対阪神・藤浪ドラ1対決。古巣の虎ファンから「帰ってきて」の声
続く6回には一死から外崎にまたアンラッキーな二塁打を許すと途端にリズムがおかしくなった。 「点を取ってもらって1点差になった直後で、あそこがターニングポイント。抑えてやろうと力んでしまった」。走者を背負って“力む”という悪い癖が顔をのぞかせる。斉藤に四球。そして、代打・森がコールされた。大阪桐蔭でバッテリーを組み甲子園を春夏制覇した1学年下の後輩である。公式戦初対決にメットライフドームのボルテージは最高潮になった。藤浪はさらに力が入った。結局、四球で満塁となったところで降板指令。2番手の岩崎が踏ん張ることができず、3番手のモレノも押し出し四球に走者一掃のタイムリー二塁打を山川に打たれるなどの散々な内容で、ゲームはワンサイドの様相になってしまった。 しかし、藤浪は悪くなかった。 「初回にすっといっていたら、どうなっていたかわからなかった。とにかく球が速い。(身長が)でかいし、リリースポイントも前で打者は、いっそう近くに感じるんじゃないか。それに思っていたよりも制球もよかった。今後、セ・リーグのチームは苦労しますよ」 攻略した辻監督は、試合後、そう本音を語った。 これが相手チームが感じる藤浪のポテンシャルなのだ。 藤浪は、ややフォームのステップ幅を短くしているように見え、まるで外国人投手のように横ぶれが小さくなったフォームから角度のあるボールをプレートとホームベースを結ぶ通称“ライン”の中に集めていた。1か月以上のファーム生活で“心身”の身に通じるメカニックを整備してきた努力の跡が十二分に感じとれた。 「状態は悪くなかったし感触はよかった。反省すべき点も多いがよかったところもあった。次につなげるようにしたい」 藤浪の表情にも手ごたえがあった。 先発の人員の関係で、一度、登録を抹消されるが、金本監督も次回登板への期待を寄せている。 感動的な古巣への勝利で新天地で蘇った姿をアピールした榎田と、復活への確かな光明を見つけた藤浪。2人の阪神のドラ1対決は、大味になった点差以上の物語をマウンド上から雄弁に語ったのである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)