寒い冬、体にしみる通勤前の一杯 福島・喜多方の「朝ラー」 2時間で100杯以上の店も
通勤や通学前の慌ただしい朝、読者の皆さんは何を食べて1日をスタートしているだろうか。「蔵とラーメンの町」として全国的に知られる福島県喜多方市には、「朝ラー」と呼ばれる朝食にラーメンを食べる文化がある。「朝からラーメン?」。ちょっと信じ難い習慣は本当なのか。現地へ飛んだ。 【写真】らーめん一平で人気の「じとじとラーメン」。見た目と違って意外にも味はあっさり ■誕生のきっかけには諸説 喜多方市発祥の「喜多方ラーメン」は、札幌ラーメン、博多ラーメンと並び日本三大ラーメンのひとつに数えられる。基本はしょうゆ味だが、店によって色合いや風味はさまざま。中には、塩味や塩としょうゆの中間の味などもあるが、いずれもあっさりした味付けが特徴になっている。 喜多方観光物産協会によると現在、同市内で喜多方ラーメンを提供する店は約90店あり、令和6年5月時点でそのうち約15軒が朝から営業している。「朝ラー」誕生のきっかけは「昔、工場の夜勤明け労働者のために始めた」「野球の朝練の後に食べられるようにした」など、いくつか説があるものの、同協会のスタッフは「真偽は不明。はっきり分からない」と話す。 平日の朝、同市で「朝ラー」営業を行う「らーめん一平」を訪ねた。この日は厳しい冷え込みで、店の外は雪も舞っていた。入り口の看板には「7時~18時30分」と書かれ、普通のラーメン店と営業時間帯が異なることが分かる。スープの香りが漂う暖かい店内に一歩入ると、一瞬で眼鏡が曇った。 ■午前4時から仕込み 店内のテーブル席では家族連れが会話を弾ませている。カウンター席で1人、ラーメンを食べていた男性は、出勤前に車で訪れていた。客が途切れることはなく、店のスタッフは忙しそうに動き回っていた。午前7時45分のラーメン店とは思えない光景だった。 同店の社長、小枝敏樹さん(34)は「陽気のいい時期と比べると、冬の朝のお客さんは3分の1ほどで地元の方が多い」という。最盛期は4月の桜の時期から大型連休までだといい、「忙しい日は開店から夕方まで、お客さんが途切れない」(小枝さん)。午前7~9時の2時間でラーメンが100杯以上出ることもあるという。 小枝さんは2代目。「朝ラーは先代である父が始めた。自分もラーメンを食べて小学校に行ったことを覚えている。うちは25年くらいやっていると思う」。小枝さんは毎朝午前4時に店に来て、1人で仕込みを行っている。