解散は五輪後? 迷走するコロナ対策 日本政治はウイルスに打ち勝てるか
昨年末に内閣支持率が急落したもう一つの要因は「政治とカネ」の問題である。 安倍政権下で明らかになった「桜を見る会」問題では昨年12月24日、同会前日に催された夕食会費用を政治資金収支報告書に記載しなかったとして安倍晋三前首相の秘書が略式起訴され、罰金100万円の略式命令を受けた。翌25日には吉川貴盛元農水相が収賄容疑で東京地検特捜部により事務所の家宅捜索を受けている。 こうした「政治とカネ」の問題は、いわば安倍政権の残滓である。安倍政権を官房長官として支えてきた菅首相がこの残滓にどのように立ち向かうかが問われる。「桜を見る会」に関する自らの過去の国会答弁について説明責任を果たすことや、党として政治資金に対する規律を正していくことが必要であろう。
2050年温室効果ガス「ゼロ」など独自色も出したが……
コロナ対応以外の政策面についてはどうだろうか。 菅政権は、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」、不妊治療への助成拡大、携帯電話料金引き下げなど独自色のある政策を打ち出している。 これらの政策は個別には評価すべきものも多い。不妊治療に取り組んでいるカップルには助成拡大は朗報であろうし、カーボンニュートラルも、欧米諸国より出遅れていた地球温暖化対策への日本の姿勢を世界にアピールすることができる。一方で、国が向かうべき大きな方向を示したビジョンはまだ見えてきていない感は否めない。特に、急速な少子高齢化が進み、財政赤字も積み重なる中、日本をどのように運営していくのかというグランドビジョンを見せてほしいところである。 菅首相は就任前に「消費税は今後10年上げる必要はない」と述べている。しかし、日本は巨額の財政赤字を抱えている。国・地方を合わせた長期債務残高は、2020年度末で1125兆円、対GDP比で197%である。安倍政権は、2025年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標を立てていたが、コロナ禍の影響で目標達成見通しは2029年度に後ズレした。 106兆円と巨額になった来年度予算案など、未曾有のコロナ危機においてはやむを得ない面もある。ただ少子高齢化が進む中、社会保障費は今後間違いなく膨れ上がるため、歳入を確保するとともに歳出面での切り込みも欠かせない。負担増など社会保障の抜本的改革も不可避であろう。携帯電話料金引き下げなどと異なり、国民に「苦い薬」となる政策に菅政権がどこまで踏み込めるかが課題である。