新型コロナ特措法の「緊急事態宣言」とは? 市民生活にどんな影響がある?
新型コロナウイルスの感染が日本全国で広がり続ける中、改正新型インフルエンザ等特別措置法(特措法)に基づく「緊急事態宣言」が出るのかどうかに注目が集まっています。言葉の響きから、私たちの市民生活がさまざまな強権的な制約を受けるような印象もあるかもしれません。もし「緊急事態宣言」が出された場合、どんな影響があるのでしょうか。特措法の条文を中心に見てみましょう。(条文はいずれも要約したもの。一部政令の内容含む) 【動画】「かかってはいけない病気」医師が口にする新型コロナの怖さとは?
誰がどんなふうに出す? 要件は?
いま取り沙汰されている「緊急事態宣言」は、今年3月に改正された新型インフルエンザ等特措法(2012年成立)に基づくものです。新型コロナウイルスにも対応できるように改正されました。 「緊急事態宣言」は、対象となる感染症の流行状況が一定の条件を満たしたと判断された場合、首相が発令します。 ではどんな場合に出せるのでしょうか。以下の2つの要件を同時に満たす必要があります。(特措法32条) ・国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがある場合 ・全国的かつ急速なまん延により、国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある場合 実際に首相が「緊急事態宣言」を出す際は、(1)実施する「期間」(2)実施する「区域」(3)「緊急事態」の概要、を示すことになっています。 期間は「2年以内」と定められていて、「1年を超えない」範囲で延長することができます。区域は原則、都道府県単位で指定されますが、感染状況によっては隣接県や日本全域の指定もあり得るといいます。 いったん決めた期間や区域は、流行状況に応じて変更する可能性があるほか、緊急事態の対応が必要なくなった場合は、速やかに緊急事態「解除宣言」をします。 緊急事態宣言の発出からの一連のこうした決定は、国会に逐次報告することになっています。
住民の外出や娯楽施設使用は禁止されるの?
では「緊急事態宣言」が出た場合、政府や自治体は何ができるようになるのでしょうか。 首相から宣言が出されると、特措法に基づき、その都道府県の知事にさまざまな権限が与えられます。 特措法では「まん延の防止に関する措置」として、知事がその区域の住民に、定められた期間、以下のような行動を制限するよう要請できます。 ポイントは、学校や娯楽施設について、知事は利用の制限を「要請する」ことが可能で、それに従わない場合は「指示する」ことができます。ただ住民の外出については「自粛を要請する」ことができるだけです。 【外出自粛】(特措法45条) 生活維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないことを「要請」できる。 【施設利用制限:学校など】(同45条と政令) 学校や社会福祉施設などの使用の制限や停止などを要請できる。 これらの施設には、保育所や介護老人保健施設などのほか、大学や専修学校(※)も対象に含まれます。 【施設利用制限:娯楽施設など】(同45条と政令) 映画や音楽、スポーツ施設などの使用の制限や停止、またはイベント開催の制限や停止などを要請できる。 具体的には、以下のような施設が対象になります。 ・劇場や映画館、演芸場(※) ・百貨店やスーパーマーケット(※) ・ホテルや旅館(※) ・体育館や水泳場、ボーリング場(※) ・博物館や美術館、図書館(※) ・キャバレーやナイトクラブ、ダンスホール(※) ・理髪店や質屋、貸衣装屋(※) ・自動車教習所や学習塾(※) ただし、百貨店やスーパーマーケットについて、食品や医薬品、衛生用品、燃料など医療や生活必需品の売場は対象外になっており、営業することができます。 (※)…いずれも建物の床面積1000平方メートル超のもの