愛犬家必読、科学が教えるしつけのカギ、子イヌはいつ何ができるようになるのか
物理的な世界を理解する
子イヌたちは生後13週までに、下にボウルが隠されているタオルと何も隠されていないタオルを区別できるようになった。また子イヌたちは、リードにつながれていると、自由には動けず、人とつながっていることを理解していた。 こうした理解はトレーニングの鍵だ。その時点でのイヌの認知能力がわかっていれば、トレーニングによってできることと、できないこともわかるからだ。
学習したルールの変更に適応する
子イヌたちは、学習した解決策が通用しなくなると、方向転換することで、より複雑な多段階の問題を解決するようになった。円筒の開口部を入れ替えた別の実験では、子イヌたちはおやつを手に入れるため、これまでうまくいっていたことをやめ、反対のことをしなければならなかった。 この逆転学習スキルは、盲目の人を誘導するといった、イヌの最も驚くべき能力の根底にあるものだ。ほとんどの課題では、人が何かを頼み、イヌがスキルを使って対応する。「しかし、目が見えない人を誘導する場合、人が何かを頼んでイヌがやり方をわかっているときもありますが、その依頼はそれでも間違っている、ということに気付かなければなりません」とヘア氏は説明する。 「たとえば、道を横断するように言われたけれど、実際には車がいて危ないこともあります。こういう場合、たとえある文脈では正しい答えでも、依頼通りに振る舞うのではなく、別のことをしなければなりません。これは、イヌにとってはとても難しいことです」
最終的にはすべての子イヌが良いイヌになる
すべてのイヌが介助犬に必要な認知能力を備えているわけではない。しかし、子イヌが何を考えているか、特定の知能のトレーニングをいつ始めるべきかを理解すれば、すべてのイヌが最高の能力を発揮するよう手助けできる。 米エール大学で比較認知研究所とイヌ認知センターの所長を務めるローリー・サントス氏によれば、イヌが何をわかっているかについては多くの研究が始まっているが、イヌが、自分がわかっていることを理解するようになる時期についてはほとんど研究されていない。「子イヌの発達の各段階において、何が発達上適切かを知る必要性を長年感じてきましたが、ヘア氏の素晴らしい研究が発表されるまで、その答えはありませんでした」 イヌは感情的に身近な存在で、私たちは子イヌを幼児のように見てしまうことがあるとジョンストン氏は指摘する。「飼い主の意識が高まれば、自分のイヌにはまだ能力がない時期なのだと考えられるようになり、これまでと違う期待を持てるようになると思います」 ヘア氏とウッズ氏は、子イヌがこれらのスキルを発現してから習得するまでには時間がかかると強調する。ほかの子イヌが自分の子イヌより早く成長しているのを見ても、飼い主は落胆すべきではない。「それは希望に満ちたメッセージです」とヘア氏は話す。「諦めてはいけません。通る道筋は違うかもしれないし、すべてが異なる速度で進んでいるかもしれませんが、最終的にはゴールにたどり着きます」 疲れ果てた飼い主たちも、これで少しは安心できるだろう。なぜなら、犬の幼稚園の園児たちがヘア氏のメッセージを体現しているためだ。すべての子イヌが介助犬に適格と判断されることはないかもしれないが、卒園までに、すべての子イヌが朝まで眠るようになっていた。
文=Brian Handwerk/訳=米井香織