Z世代がオーナー お年寄りがゲームの動画配信 少子高齢化が進む中国でハイテク駆使の「スマート老人介護施設」が急増中 人気高く数百人待ちも【上海介護最前線】
少子高齢化が進む中国では、AIやハイテク機器を駆使した「スマート老人介護施設」が急増しています。 国家統計局によりますと、中国の人口のうち60歳以上の割合は10年で6ポイント上昇し、2023年末には21.1%になりました。2014年まで30年以上続いたいわゆる「一人っ子政策」の影響で、この先中国の少子高齢化は急激に進んでいくとみられています。
出入りは顔認証 健康状態はカメラ、センサー、AIで管理
そうした状況に対応するために生まれたのが「未来の老人ホーム」ともいうべきハイテクな介護施設です。 上海市中心部にある「スマート介護ホーム」には56歳から100歳までの183人の高齢者が暮らしています。 施設への出入りは顔認証で行われ、院内ではカメラやセンサーで入居する高齢者の健康状態を24時間管理しています。 (スマート養老院の担当者 高莉さん)「AIのサポートによって施設の機能が向上しました。管理効果だけでなく高齢者たちの満足度も上がっています」
上海市の「スマート養老院」は人気が高く、数百人待ちの状況です。 上海市政府は2025年までに100ヵ所のスマート養老院を開設する計画を発表しています。 この実現のため、一等地にある高級マンションを改修して高齢化施設にする事例も出てきています。その際、マンションに住んでいた人はほぼ強制的に引っ越しをさせています。 上海の高齢者は日本と比べるとスマートホンなどの機器にあまり苦手意識がないといえます。上海はほぼ完全なキャッシュレス社会で、買い物をするときはほとんどの場合に使う必要があります。 新型コロナウイルス禍でのロックダウンもあり、ビデオ通話なども日頃から使っています。
動画出演で入居が無料!? "Z世代"が運営する高齢者施設も
このほか、中国内陸部の河南省には、入居が無料の高齢者施設があります。 入居者は、無料で入る代わりに、動画配信の出演者となる必要があります。 元々の特技を生かし「数学の難問を説く」動画や、テレビゲームで対戦する「Eスポーツの大会に出場してみた」動画、若者に人気の「人狼ゲーム」を行う動画などを配信しています。 このホームのオーナーは、20代の若者で、いわゆるZ世代です。 「お年寄りを見世物にするな」といった批判もあるが、コンセプトは「若者が楽しいことは、お年寄りも楽しい」ということで、概ね好意的に受け取られています。中国では、こうした施設も今後広がりを見せていくかもしれません。
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