苦境でもがく女子W杯得点王 「ゴールが欲しい」…守勢のチームで生かしきれない万能の攻撃性【現地発コラム】
出場機会増へ「チームに何か変化を加えることができたらいい」
この日のユナイテッドでは、昨季をレンタル移籍先のトッテナムで過ごしたグレース・クリントンがトップ下を務めた。今季のユナイテッド1軍デビュー以来、新戦力となっている21歳のイングランド女子代表MFは、リーグ戦3得点の数字のほかに体格面でも宮澤に勝っている。 ただし、この日の出来は及第点以下。20代半ばの日本女子代表MFは、オン・ザ・ボールとオフ・ザ・ボールの双方で、存在を消されにくい巧妙さと賢明さに長けてもいる。 本人が、出場機会増への決意も込めて語った。 「こういうゲーム展開で落ち着かせようってなったら、(出番は)ボランチなのかもしれないですけど、どこで出ても持ち味は変わらないっていうところはあります。こっちの選手は、フィジカルとか強い選手がたくさんいるわけで、そういう周りをどうやって活かすか。こう(前に)蹴っていても、少し角度をずらして有利なところに出してあげれば、その選手がより自分の長所を活かしやすくなる。常に相手にとって嫌な位置に立ちながら、どう味方を使って、どう自分自身もフリーにするか。そこは、どのポジションでもやりたいと思っています。味方を使いながら、自分もえぐっていく。そういう部分をより磨いていきたい。 外国人の選手を相手に1対1で勝てるのかというと、やっぱり身体つきとか持っているものが違う。なら、その状態でどう戦うかってなった時に、ポジショニングとか、1歩目の動き出しとか、そういうところで勝負に勝てるところはあると思うんです。日本人選手らしさというか、個人としての良さを出しながら、チームに何か変化を加えることができたらいい」 チームも、そうした変化を必要としている。宮澤はベンチに留まっていた、スコア上のユナイテッド惜敗を眺めながら、そう強く感じた。 [著者プロフィール] 山中 忍(やまなか・しのぶ)/1966年生まれ。青山学院大学卒。94年に渡欧し、駐在員からフリーライターとなる。第二の故郷である西ロンドンのチェルシーをはじめ、サッカーの母国におけるピッチ内外での関心事を、時には自らの言葉で、時には訳文として綴る。英国スポーツ記者協会およびフットボールライター協会会員。著書に『川口能活 証』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『夢と失望のスリーライオンズ』、『バルサ・コンプレックス』(ソル・メディア)などがある。
山中 忍 / Shinobu Yamanaka