クラウドファンディングが大学を救う? 落合陽一氏の試みが地方国立大に広がる背景とは
「日本でクラウドファンディングによってお金が集まっているのはいいことです。でも、裏を返すと、アメリカのように大口の寄付者がいないともいえます」 寄付文化を醸成して、外国の企業や財団などから大口の寄付を増やしていくことは日本の大学や研究機関にとって資金面でプラスになる。それには日本人の寄付に対する意識も変わっていく必要があるという。 「日本では、大口の寄付には何らかの条件が付けられてしまうと思う人が多いようです。カブリ財団の支援を受ける時も、研究の中立性が損なわれるという批判を受けました。確かにそういう例もありますが、純粋に科学の発展を願っての寄付も当然あります」 寄付文化の根づいていない日本において、クラウドファンディングは、政府を中心とした支援というこれまでの仕組みでは手当てできていない部分を補完している。財政難に苦しむ日本の大学、とりわけ地方の国立大学にとっては福音になり得るだろう。さらに寄付意識が根づけば、科学をはじめとする学術研究を市民や企業が支える意識が広がる可能性もある。クラウドファンディングの広がりはその第一歩となるかもしれない。
--------- 荒舩良孝(あらふね・よしたか) 1973年、埼玉県生まれ。科学ライター/ジャーナリスト。科学の研究現場から科学と社会の関わりまで幅広く取材し、現代生活になくてはならない存在となった科学について、深く掘り下げて伝えている。おもな著書に『生き物がいるかもしれない星の図鑑』『重力波発見の物語』『宇宙と生命 最前線の「すごい!」話』など