クラウドファンディングが大学を救う? 落合陽一氏の試みが地方国立大に広がる背景とは
レディーフォーで学術系プロジェクトの窓口を務めるキュレーターの金久保智哉さんは、いまの支援動向にはコロナ禍の影響もあると分析する。 「医療に注目が集まったこともあり、大学病院や医学部のプロジェクトが一気に増えた印象があります。金額面でも1000万円を超える資金を集めるプロジェクトが増えています」 一方でクラウドファンディングには、地方国立大学の研究費不足を埋める役割もある。
科研費で手当てできない 日本刀や抗がん剤研究にも
「私は研究対象を日本刀にまで広げたかったのですが、最初の一歩となる研究費がなかなか得られませんでした」
岐阜大学教育学部の中田隼矢准教授はそう語る。金属の強度が主な研究領域で日本刀の強度についての研究もしたかったが、科研費や助成金が得られなかった。そこでクラウドファンディングに挑戦した。2022年にレディーフォーで募集し、約261万円の資金を集めることができた。 「日本刀に関する公開講座をオンラインで開催していたこともあり、全国の中高生をはじめ、たくさんの方から支援をもらいました。税金による支援とは別の重さを感じました」 同じく岐阜大学大学院の連合創薬医療情報研究科の平島一輝特任助教は、がん細胞の増殖を抑える物質の研究にクラウドファンディングを利用した。平島特任助教が取り組むのは、フキノトウから取り出した「ペタシン」という物質から、がん細胞の増殖と転移を抑える抗がん・転移阻害剤を開発するという研究だ。
当初、製薬企業に提携を求めたが、ペタシンの化学構造の一部を変化させる作業が終わっていないと契約できないと言われた。だが、その作業には1000万円ほどの費用が見込まれた。 「科研費も申請しましたが、得られたのは100万円や200万円で全然足りません。そこで、クラウドファンディングで資金を集めようと考えたのです」 2022年にレディーフォーで募集したところ、452人から目標金額を上回る958万円を集めることができた。得られた資金で試薬や機材を揃えるだけでなく、研究員も雇うことができ、しっかり研究を進められる体制を整えることができた。 ただ、クラウドファンディングは万能ではない。科研費を申請するほうが労力は少ないと平島特任助教は言う。クラウドファンディングでは多くの人に資金を投じてもらうために、専門外の人でも分かるように研究内容や進捗状況などを詳しく説明する必要があるからだ。 「SNSのやり取りなどにもかなりの時間がかかります。私はいろいろな人の意見を聞きたいという目的もあったのですが、単にお金を集めたい場合、クラウドファンディングは向かないかもしれません」