クラウドファンディングが大学を救う? 落合陽一氏の試みが地方国立大に広がる背景とは
筑波大学財務制度企画課の担当者は、現在の大学運営の厳しさを語る。 「大学の予算にも限りがあり、優先順位の低いものにはなかなか予算をつけられません。クラウドファンディングで集めた資金は研究だけに縛られていないので、広く教職員の手助けとなっています」 とはいえ、クラウドファンディングで集まる資金は大学の運営費を支えるほどの規模にはなっていない。担当者は続ける。 「クラウドファンディングで寄せられる資金は大学の年間予算の1%にも満たない状態です」
大口の寄付など大学に資金が入る仕組みが必要
大学の運営費交付金などの増額が見込めない現状で、研究や大学の運営に必要な資金をどう確保すればいいのか。総合地球環境学研究所の山極所長は、企業などの寄付や投資をもっと幅広く受けられるような制度設計を提案する。
「税制を変え、企業などが大学に寄付や投資をするメリットを高め、大きなお金が大学に入るようにできれば、大学は大きく変わると思います」 現在、国立大学の多くは、研究や教育環境を維持するために民間企業からの委託研究費や寄付講座、資金運用など財源の多様化を試みており、クラウドファンディングへの挑戦もこの流れの中にある。ただ、海外では他にも運営資金の獲得手法がある。アメリカの大学で主流なのは、大口の寄付や投資を受ける方法だ。 実は、日本にも海外の財団から寄付を受けて運営を安定させている研究機関がある。東京大学のカブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)だ。カブリIPMUはもともと2007年度から文科省が実施している世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)によって設立された研究所だ。だが、補助金がなくなると存続できなくなるのでは、との危惧が設立当初よりあった。 そこで、初代の機構長だった村山斉教授は、アメリカのカブリ財団から恒久的な支援を受けることで研究所が存続できるように働きかけた。カブリ財団は2012年に750万ドル(当時、約5億7000万円)の基金を設立、その運用益を毎年カブリIPMUに送っている。村山教授は日本の現状をこう指摘する。