クラウドファンディングが大学を救う? 落合陽一氏の試みが地方国立大に広がる背景とは
20年間で13%減額の交付金、地方大には死活問題
地方の国立大学がクラウドファンディングに乗り出す背景には、財政基盤が脆弱になっていることがある。 国立大学の収入の大きな柱である運営費交付金は、国立大学が法人化した2004年度は1兆2415億円だったが、2023年度は1兆784億円と約20年で13%ほど減少した。東京大や京都大など旧帝国大学と比べて、地方の国立大学はこうした減額の影響を受けやすい。
前京都大学総長で総合地球環境学研究所の山極壽一所長は、この影響は研究現場にも出ていると言う。 「運営費交付金が削られても、光熱費や電子ジャーナルの購読料の高騰、物価高などへの配慮はない。その結果、人件費を削ろうと事務員を減らした。すると、これまで事務員がやっていた仕事を研究者がやることになり、肝心の研究時間を減らすことになりました」 そうした影響もあってか、日本の研究力はこの20年ほどで大きく後退してしまったという。 鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長が、国際的に影響力のある学術誌に掲載された論文数を調べたところ、日本以外のG7諸国の平均に対する日本の論文数の割合は、2004年から12年間で40%も差が開いた。
文科省は運営費交付金を減額するだけではなく、いわゆる「選択と集中」と呼ばれる政策を2000年代から打ち出し、特定の研究分野や大学に資金を集中させてきた。だが、それが日本の研究力をさらに弱める結果を招いたと豊田学長は悔やむ。 「日本はもともと(旧帝国大学など)特定の大学に資金が集中していて、『選択と集中』がされた状態でした。この政策はそれに輪をかけることになり、日本の研究者の数を減らし、研究の多様性も阻害しました」 過度な「選択と集中」は、大学の運営にも大きな影を落としている。教育の場としての施設・環境も貧弱になってきているのだ。大学のクラウドファンディングのプロジェクト内容を見ると、学生の英語・学術研修の参加費支援、グラウンドやキャンパス環境の整備費、クラブ活動で学生が活動するための資金など、日常的な活動にも利用されていることが分かる。