プロだけが気づいていたこと…週刊文春トヨタ記事の「社外取締役」告白は、歴史を画する記事だった
「巨弾レポート」の内実
今年2月、週刊文春に「豊田章男トヨタ会長はなぜ不正を招いたのか」と題する「巨弾レポート」が掲載された(2月29日号)。「『全部愛人だと言われている二人の側近女性』との本当の関係」という思わせぶりな見出しもある。 【写真】再逮捕された「美人すぎる寝屋川市議」の写真集全カット しかし決定的に重要なのは、目次の見出しにある「現役社外取締役が実名告白『一家言ある副社長を次々放逐した』」とある部分である。コーポレートガバナンスの観点からいえば、これは歴史を画する「巨弾」と評価できるだろう。 トヨタが過半の株を有する上場会社・日野自動車での不正が公表されたのは2022年3月4日であった。以来、トヨタが25%弱の株式を有する上場会社・豊田自動織機について2023年3月17日、100%子会社であるダイハツ工業について同年4月28日に不正が公表された。中身は型式認証の不正取得など深刻なものだった。 日経(2024年1月30日付)によれば、豊田章男社長はみずから、「グループ責任者としておわび申し上げる」と明言した。一連の不正で最大の問題はどこにあると考えますか、との問いに対しては、 「一番重大なのは(人を笑顔にするといった)原点を見失っていること。グループ各社の根っこ(源流)は同じだが、トヨタが発注者になる場合もあり、物が言いづらいという点もあるだろう。まずは上からでも下からでもなく、私が色々な方と話していく必要がある。きょう原点を各社に共有したが、しっかり消化・理解することで初めて行動に移っていくと思う」 と述べ、さらにダイハツの不正を見抜けなかった自身の責任をどう考えていますか、との問われて、 「社長としての14年間は、リコール問題や東日本大震災など危機の連続だった。トヨタを立ち上がらせるだけで精いっぱいで、ゆとりがなかったというのが正直なところだ。見ていなかったというよりは、見られなかった」 と述べたという。 冒頭の週刊文春は、不正はいずれも自身の社長在任中に起きていたもので、説明会でその点を問われると、豊田章男氏は次のように述べたと報ずる。 「トヨタにもものが言いづらい点もあると思う」 ここでいう説明会とは1月30日に開かれたトヨタのグループビジョン説明会を指している。 いずれもきわめて率直な答えである。その率直さは、私には自分以外にはトヨタのトップはあり得ないという豊田章男氏の強い自覚と使命感を意味しているように思われる。