なぜホームスタジアムのない新宿の異色サッカークラブ「クリアソン新宿」がJFL昇格を決めることができたのか
人口約34万人の新宿区はその1割強を外国籍が占める。本社周辺には新宿二丁目や歌舞伎町、新大久保、高田馬場、神楽坂など性格を異にする町が存在する。そのなかで謳い続けてきた「創造」を、さまざまなタイプの選手が集い、個性を組織力に変えて戦うサッカーで具現化させながら、より多様性を認め合える町に変えていけるか。 壮大なテーマに魅せられたのか。キャプテンの井筒は自身のツイッター(@izz_izm)の自己紹介欄の冒頭を、こんな言葉とともに始めている。 「新宿でやりたいことがあったので、Jリーガーをやめました」 ホームタウンとする新宿区との緊密な関係や経営を含めたクラブの方向性が、ホームスタジアムがない状況を補って余りあると評価された証として、クリアソンは今年2月にJリーグ参入への前提となる「Jリーグ百年構想クラブ」に認定されている。 JFLへ参加するチームは、有料試合開催が可能なスタジアムを試合会場として用意することが“奨励”される。今シーズンの東京都内では味の素フィールド西が丘、味の素スタジアムに隣接するAGFフィールドなどが試合会場になっている。 来シーズンのJFLを戦う上では問題はない。しかし、見すえる目標が23区初のJクラブへ変われば、例えばJ3では3人以上のプロ契約選手を擁さなければいけないし、監督にも日本サッカー協会が発行する最上位の指導者ライセンス、S級が求められる。 何よりもホームスタジアムを持たなければ話にならない。ホームタウンの新宿区内における新規建設や、あるいは新国立競技場を使用するための機運を喚起できるかどうか。ピッチ上で描いてきた軌跡をさらに加速させ、クリアソンの周囲でポジティブな世論を導く作業もまた、創設時から求めてきた「創造」の一環となる。(文中敬称略) (文責・藤江直人/スポーツライター)