なぜホームスタジアムのない新宿の異色サッカークラブ「クリアソン新宿」がJFL昇格を決めることができたのか
クリアソンへJリーガーが集まる流れは、今シーズンに入ってさらに強まった。栃木SCからDF瀬川和樹(31)、讃岐から池谷、盛岡からFW大谷真史(27)、FC町田ゼルビアからMF森村昂太(33)、そして柏レイソル、横浜F・マリノス、サガン鳥栖でJ1リーグ戦通算365試合に出場した実績を持つDF小林祐三(36)が加わった。 もっとも、新宿の地へ集まってきた元Jリーガーには共通点がある。前所属チームを退団した時点で「プロ」を引退。株式会社Criacaoの社員としてフルタイムで働き、午後6時から約2時間、新宿区内の落合中央公園で練習を積み重ねてきた。 アマチュア最高峰となるJFL昇格を決めた刈谷戦では、キャプテンの井筒をはじめ岩舘、米原、瀬川、池谷、大谷、岡本、そして今シーズン限りでの現役引退を表明している小林が先発。後半からは伊藤、森村も投入されたなかで、前半アディショナルタイムに池谷と井筒が連続ゴールを奪い、後半33分には大谷も続いた。 プロが不在のチームは株式会社Criacao社員に加えて、他企業の社員や大学生で構成される。同40分に4点目を決めたFW原田亮(34)は慶應義塾大学理工学部と同大学院卒業後に一般企業勤務をへて、4年前に株式会社Criacaoの一員になった。 会社で経営企画室長を、チームでは運営統括部門と事業統括部門のトップを務める原田のゴールへ、丸山はツイートのなかで最大級の賛辞を送っている。 「この男なしにこのクラブの今はない。ピッチにピッチ外にと闘い続けてくれたりょうの最高の得点!」(原文ママ) クリアソンにはホームスタジアムがない。今シーズンの関東サッカーリーグ1部を振り返れば、駒沢オリンピック公園総合運動場第2球場、味の素フィールド西が丘、多摩市陸上競技場、赤羽スポーツの森公園競技場でホーム戦を開催。相手チームの本拠地でホーム戦を開催したケースも5度と、全11試合の半数近くを数えた。 プレーする環境面でハンデを背負うのを承知の上で、それでも元Jリーガーをはじめとする選手を惹きつけ、ひとつにまとめた上でJFL昇格へと昇華させた背景には、丸山が掲げ続ける「サッカーは手段でしかない」と密接にリンクしている。