なぜホームスタジアムのない新宿の異色サッカークラブ「クリアソン新宿」がJFL昇格を決めることができたのか
丸山が立教大学経済学部4年生だった2005年春。就職活動に備えて3年生でサークル活動を引退するも、内定を得た後にボールを蹴りたくなった4年生の受け皿的な存在として、丸山が代表を務める形でフットボールクラブCriacaoが設立された。 最初のターニングポイントは2009年。卒業後に大手総合商社に就職し、人事異動で東京へ戻ってきた丸山を中心に、クラブチームとしての活動を本格化させようと一念発起。J1から数えて10部にあたる東京都社会人サッカーリーグ4部に参入した。 次は2013年。大手総合商社を退社した丸山が起業した、体育会系大学生のキャリア支援をはじめとする人材育成を主たる事業とするベンチャー企業、株式会社Criacaoがクラブの運営会社となった。日本語で「創造」を意味する、あまり聞き慣れないポルトガル語の「Criacao」にはクラブの設立時から掲げられる理念が反映されていた。 「サッカーを通じて、世の中に感動を創造し続ける存在でありたい」 本社が新宿一丁目にある新宿区とともに歩む決意をより鮮明にするために、2018年にはチーム名称に「Shinjuku」を加えた。チームも東京都社会人サッカーリーグ1部から関東サッカーリーグ2部をへて、1部へとステージを上げていた昨年11月には、地元と密着した一連の活動が認められる形で新宿区との包括連携協定が結ばれた。 項目は「スポーツ振興」「学校と地域との連携」「多文化共生」「健康寿命延伸・健康づくり」「観光・産業振興や地域商店街の活性化」と多岐に渡り、同時にサッカー界におけるクラブの存在感も浸透。チームの理念に賛同する元Jリーガーも増えてきた。 ガイナーレ鳥取から2015年に加入していたFW岡本達也(35)に加えて、2019年には徳島ヴォルティスで選手会長を務め、前年のJ2リーグ戦で自己最多の33試合に出場していたDF井筒陸也(27)が加入。昨年は浦和レッズからGK岩舘直(33)、SC相模原からMF伊藤大介(34)も、いわてグルージャ盛岡からはDF米原祐(27)が続いた。