今季限りで浦和退団の宇賀神はどんな思いで天皇杯決勝進出のヒーローになったのか…「あなた方は間違っていたと証明してやる」
浦和レッズを3大会ぶりの頂上決戦へ導いたのは、今シーズンを最後に愛してやまない赤いユニフォームを脱ぐ男の魂が込められた豪快な一撃だった。 天皇杯の準決勝2試合が12日に行われ、埼玉スタジアムでは浦和とセレッソ大阪が対峙。ともに無得点で迎えた前半29分に契約満了に伴う退団が発表されているDF宇賀神友弥(33)のミドルシュートで先制した浦和が後半にも1点を追加し、今シーズン限りで現役を引退するFW大久保嘉人(39)が先発したセレッソに2-0で快勝した。 等々力陸上競技場では来シーズンからJ2へ降格する大分トリニータが、大会連覇を狙った川崎フロンターレを1-1のままもつれ込んだPK戦の末に5-4で撃破。前身の三菱重工時代を含めて浦和が3年ぶり8度目の、準決勝で大番狂わせを起こした大分が初優勝を狙う決勝は19日14時に国立競技場でキックオフを迎える。
スタメン辞退の考えも…
ヒーローは図らずも言葉を途切れさせた。 快勝の余韻が残る試合後のオンライン会見。浦和のユニフォーム姿で埼玉スタジアムのピッチに立つ、最後の一戦を終えた思いを問われた宇賀神は、5秒ほどの沈黙をへて偽らざる心境を明かし始めた。 「正直なところ、名古屋戦で自分のピッチの上での役割は終わったんじゃないか、という気持ちがありました」 名古屋グランパスと0-0で引き分けた4日の明治安田生命J1リーグ最終節で、後半開始から敵地・豊田スタジアムのピッチに立った。9月以降では最長となる45分のプレー時間を、宇賀神はチーム側が用意してくれた惜別の舞台だと受け止めた。 しかし、セレッソとの天皇杯準決勝へ向けて再開された練習で、J2の栃木SCから加入して1年目で左サイドバックとして台頭した、23歳の明本考浩が左サイドハーフを担う時間がやけに時間が多い。同時に今シーズン限りで退団する自分が、明本の後方で左サイドバックを務める状況に宇賀神は違和感を募らせていった。 「僕ではないんじゃないですか、と監督に話をしにいこうと悩んだ日もありました。自分がスタメンでは、と思ったときに気持ちを切り替えるのがすごく難しかったので」 優勝チームが来シーズンのACL出場権を手にする天皇杯。J1リーグ戦終了後に行われる準決勝以降のクライマックスは同時に、来シーズンへ向けた第一歩にもなる。一時はセレッソ戦の先発辞退も考えた理由を、宇賀神は浦和への思いに帰結させる。 「このトーナメントを勝ち抜くのは、来シーズン以降も浦和に残る選手にとって非常に貴重な経験になる。しっかりと優勝をつかみ取ることで、選手として計り知れないほど大きく成長できる場だと思っている。なので、僕ではないんじゃないですか、と」