東の空に”夏の大三角”出現 純白に輝く織姫星「ベガ」を見つけてみよう
今年の七夕の夜空はいかがでしたか? 曇っていて星が見えなかった地域もあれば、見えた地域もあったようです。私も残念ながら曇りで見られませんでした。でも、私は七夕の夜空に織姫さんと彦星さんが見えないときは、せっかく一年に一度しか会えないからこそ、誰にも邪魔をされたくないかなと思っています。 今年の旧暦の七夕は8月9日で、この日は「伝統的七夕の日」と呼ばれています。梅雨も明けたころ、今度こそは晴れて、空高く輝く織姫と彦星を夜空で見つけてみませんか?
七夕の織姫星
織姫星を見つけるために、まずは夏の代表的な星の並びを見つけましょう。今の時期、東の空を眺めると、3つの明るい星が大きな三角形をつくっているところがあります。正三角形ではなく、ケーキやピザを切り分けたような二等辺三角形です。それが「夏の大三角」。街中からでも簡単に見つけられます。 3つとも一等星ですが、よく見ると明るさが微妙に違っていて、中でもひときわ明るい星が「ベガ」。七夕の織姫星です。美しい女性が思い浮かぶような、純白でキラキラとした輝きです。ベガと、そのすぐ近くにある小さな四角い星の並びを結ぶと出来上がるのが「こと座」。星座は全部で88個ありますが、その中で唯一の楽器の星座です。「こと」と言っても、日本のお琴ではなく、西洋の竪琴の姿です。夏の夜空、美しい音色が聴こえてきそうですね。
竪琴の美しく悲しい物語
ギリシアで一番の竪琴の名手・オルフェウスという男がいました。彼が琴を奏でると、人も動物も植物でさえもその美しさに聞きほれてしまうほどでした。そんなオルフェウスは美しい妖精のエウリディケと結婚し、幸せに暮らしていました。ある日のこと、エウリディケが散歩をしていたとき、うっかり毒蛇を踏みつけ、咬まれて亡くなってしまいました。 オルフェウスはとても悲しみにくれましたが、ひとつの望みをたくしました。 「そうだ、あの世の大王プルトーン様にお願いをして、妻を生き返らせてもらおう」 こうして、オルフェウスは、冥界へと向かいました。冥界の入り口で、生きている人間は入れないと断られたオルフェウスは、竪琴を取り出して妻を想う悲しみに満ちた曲を奏ではじめました。すると、冥界の門番や亡霊たちも皆、その音色に涙し、オルフェウスに道をあけていきました。やがて、大王プルトーンのもとへとたどり着いたオルフェウスは、琴を奏でながら「どうか、愛する妻をもう一度生き返らせてください」と思いを込めて訴え続けました。 しかし、大王は首を縦に振ってはくれません。けれど、大王のお妃がオルフェウスの悲しい音色に心を打たれ、大王に「オルフェウスの願いを叶えてあげてください」とお願いしました。そこまで言われた大王は、オルフェウスに「地上に出るまでは決して妻の方を振り返ってはならぬ」という条件をつけ、連れて帰ることを許してくれました。オルフェウスはとても喜び、妻を後ろに連れて険しい道を戻っていきました。そしてようやく出口が見え、地上の明るい光が差し込んできたところで、嬉しさと妻の顔を見たさに思わず振り返ってしまったのです。その瞬間、妻エウリディケは元来た方へと引き戻され、消えてしまいました。オルフェウスは泣き叫びながら妻を追いかけました。 しかし今度は、どんなにオルフェウスが琴を奏でても冥界へは入れてくれませんでした。悲しみのあまり、気がおかしくなり、オルフェウスは亡くなってしまいました。残された琴を大神ゼウスが拾い、星座にしたと伝わっています。あなたには、どんな音色が聴こえてきますか? (葛飾区郷土と天文の博物館・湯澤真実) さて、次回は、織姫のお相手、彦星をご紹介します。夏の大三角の残る星のどちらかです。あなたはどちらだか、わかりますか?