大阪湾・播磨灘のイカナゴ不漁続き 海がキレイすぎる「貧栄養化」の影響か
瀬戸内海の春の風物詩として知られるイカナゴのシンコ(稚魚)漁ですが、近年は漁獲量が急減しています。従来3万トン獲れる年もあった兵庫県でも、昨年は147トンにまで落ち込みました。不漁の原因の1つとされるのが、海の栄養分が少なくなる「貧栄養化」。このため県では、貧栄養化している海域で栄養分を増やす取り組みを行う他、国も、貧栄養化対策を後押しするための法整備を進めています。 【拡大写真】明石漁港からもよく見える、世界最長のつり橋が「明石海峡大橋」
近年の不漁で庶民の味は「高嶺の花」に
シンコ漁解禁日となった3月6日午前8時。明石浦漁港(兵庫県明石市)に、ガガガというエンジン音を響かせながら漁船が帰ってきました。青いプラスチック製のカゴいっぱいに入ったシンコは、港に水揚げされるとすぐさまフォークリフトで明石浦漁協の構内へ運び込まれ、待っていた仲買人らが競り落としていきます。 「前はキロ数百円で買えた時もあった。それが去年はキロ5000円にまで上がってしまって。もうぜんぜん買われへん」と、漁の模様を見物しにきた男性住民はぼやいていました。 漁港を離れ、JR明石駅付近にある魚の棚商店街へ移動すると、鮮魚店の店先を先頭にシンコを求める人々が列を作っていました。 店員に聞くと、値段は1キロ5000円。男性住民が話していた金額と同じでした。近年の不漁により、庶民の味は今や「高嶺の花」になっているのです。
イカナゴ資源残すため今年は大阪湾で11日、播磨灘で20日に漁を終えた
イカナゴは、沖縄を除く日本各地の海で獲れる魚です。稚魚は関西でシンコ、関東ではコウナゴとも呼ばれます。関西では、しょうゆや砂糖などで甘辛く煮た「くぎ煮」を思い出す人も多いことでしょう。 これまで、全国有数のイカナゴの漁獲量を誇ってきたのが兵庫県です。県の資料によると、1970年から1999年まではおおむね毎年1万トン台から3万トン台で推移していました。 ところが、2000年以降は1万トンを割り込む年が出始め、さらに2017年から2019年は1千トン台に低迷。昨年はとうとう147トン(兵庫県による速報値)にまで落ち込んでしまいました。 イカナゴを取り尽くさず、これからも漁を続けられるようにするために、漁業者は近年、従来1か月程度続けていた漁期を短縮。昨年の漁の解禁日は2月29日でしたが、明石海峡よりも東の大阪湾では3月3日に、西の播磨灘でも3月6日に漁を打ち切っています。 今年も、大阪湾は11日、播磨灘では20日と、いずれも半月未満で漁を終えました。兵庫県農政環境部の担当者によると、漁業者間で協議した結果、漁獲量は昨年より多い傾向にあったものの劇的に改善したとは言えない状況で、イカナゴ資源をこの先も残すために獲れているうちに漁を終えよう、ということになったそうです。