大阪湾・播磨灘のイカナゴ不漁続き 海がキレイすぎる「貧栄養化」の影響か
栄養が少なくなる「貧栄養化」も原因の一つとして考えられている
イカナゴが減ってしまった原因の1つとして考えられているのが、海水中でリンや窒素といった「栄養塩」が少なくなる「貧栄養化」です。 かつて、瀬戸内海で問題になっていたのは栄養塩が増えて赤潮が頻発する「富栄養化」でした。その後、栄養塩の排出抑制に力を入れた結果、今度はきれいになりすぎて栄養が少なくなる海域が増えてきた、というのです。 イカナゴのエサは、海の中の動物プランクトンであり、その動物プランクトンのエサは、栄養塩を吸収して増える植物プランクトンです。したがって、栄養塩が少なくなると植物プランクトンが減りますので、動物プランクトンも増えにくくなります。
兵庫県は「海底耕運」や「かいぼり」など対策を実施
兵庫県の水産技術センターらによる調査、分析の結果、近年はイカナゴがエサを十分に食べていないためやせてきていること、そのために2016年~2018年における1尾あたりの産卵数は、イカナゴがたくさん獲れていた約30年前の約3分の1に減っていることがわかりました。 また、シミュレーションを行なった結果、1990年代なかばの栄養塩濃度に戻せばイカナゴの漁獲量は現在の約2倍に、2000年代前半の栄養塩濃度なら約1.6倍に増える、との結果が得られました。 漁獲量の減少は、イカナゴだけではありません。県農政環境部の担当者は、「1990年代の後半から、ノリの色が黒くならない『色落ち』が問題になり始めた他、漁船漁業の漁獲量も減少傾向にあります」と話します。県では、これらについても栄養塩の減少が大きな影響を与えている可能性があると見ています。 このため、県は2008年から、ノリの養殖時期である11月~4月に限って下水処理場から放流する水の栄養塩濃度を上げる試みをはじめた他、海底をかき回して栄養塩を海中に供給する「海底耕運」や、ため池にたまっている栄養塩の豊富な水を排出する「かいぼり」などを実施。海水中のリンや窒素の濃度の下限値を設定して、栄養塩が減りすぎないように水質を管理するなど、貧栄養化した海域での漁獲量回復に取り組んでいます。 その結果、下水処理場の近くにあるノリ養殖漁場ではノリの色づきがよくなるなど、局所的には効果が現れているそうですが、イカナゴの漁獲量が落ち込んでいる点を考えると、まだ大きな効果が現れているとは言えません。担当者は「1県の取り組みだけでは限界があります」として、さらに効果を上げるには他府県との連携が必要との考えを示します。