大阪湾・播磨灘のイカナゴ不漁続き 海がキレイすぎる「貧栄養化」の影響か
複数府県で「貧栄養化対策」
こうした貧栄養化対策を後押しするため、政府は2月26日に閣議決定した瀬戸内海環境保全特別措置法の改正案の中に、「栄養塩類管理制度の導入」を盛り込みました。 これは、瀬戸内海に面した府県の知事が単独もしくは共同で、周辺海域に悪影響を与えないことを前提に、貧栄養化した海域で栄養塩を適切な濃度に保つための計画を立て、実行できるようにする、という制度です。これにより、イカナゴを含むさまざまな水産資源の持続的な利用の実現や、生物多様性の確保をもくろみます。 この新制度を盛り込んだ改正法案が施行されれば、瀬戸内海の環境政策における1つの転換点となるでしょう。赤潮が多発していた1973年に施行されて以降、同法はとにかく栄養塩の排出をいかに規制するかに終始してきたからです。
さらに、環境省水・大気環境局の担当者は「栄養塩の管理は必要ですが、それとともに海の水温などに影響を与える気候変動への対応も不可欠」として、二酸化炭素の吸収源となる藻場や干潟の保全・再生にも取り組んでもらいたいとしています。 ただ、改正法案が今国会で可決、成立したとしても、瀬戸内海に面した府県による貧栄養化対策が本格化するのは改正法の施行後になります。イカナゴの漁獲量が回復して庶民の味に戻るまで、もう少し時間がかかりそうです。 (取材・文:具志堅浩二)