「低い山でも事故は多い」秋のレジャーに潜む事故!遭難のプロに聞く、クマだけじゃない危機
登山をするときは、山の名前と、どのコースを歩くのかを記したメモを、必ず家族や身近な人に残すこと。登山者と連絡がとれなくなってもそのメモがあれば、すぐに捜してもらえる可能性が高い。
秋の特徴は寒暖差が大きいこと
もうひとつ大切なのが、山への持ち物だ。昨今、タウンウエアで荷物をほとんど持たずに山登りをする“軽装登山”が増えているが、羽根田さんは「もってのほか」と警鐘を鳴らす。 「山岳事故でいちばん多いのは『道迷い』。ヘッドランプと防寒着、万が一のことを考えてツェルト(簡易テント)を持っていくと、遭難して山で一夜過ごさなければいけなくなっても耐えられます。携帯のモバイルバッテリー、雨具は絶対に必要です!」 特に秋の登山は、ヘッドランプと防寒着が必携だ。ヘッドランプは、遭難した際に自分の存在をアピールする役目も果たしてくれる。 「秋になるとだんだん日が短くなりますが、そのことを想定していない人が少なくありません。『日帰り登山だから必要ない』とヘッドランプを持っていかない。でも、気づいたら周りが真っ暗で、下山できなくなる。それで救助要請しなければならなくなったケースもあります」 山間部では午後3時を過ぎると、暗くなってくる場所も多い。山に行くときは午後2時過ぎには下りてこられるように計画しよう。 そしてもうひとつ、秋の山で注意したいのが、天候の急激な変化だ。 「山はもともと天候が変化しやすいのですが、秋の特徴は寒暖差が大きいことです。天気がいいときは、秋晴れのさわやかな陽気となりますが、ひとたび天気が崩れると、真冬のようになることも」 2023年10月、那須連山の朝日岳で悪天候の中で登山をしていた人が低体温症になり、行動不能に陥った結果、4人が亡くなっている。 この事故の現場となった那須連山は、標高2000mほどの山が多く、中級山岳といわれている。そのような山でも天候次第では低体温症を誘発してしまう状況になるのが秋の山の恐ろしさだ。 さらに標高3000m級の山になると、秋でも猛吹雪に見舞われることもある。 「野外のレジャーは誰でも楽しめる反面、ちょっとしたミスが命取りになってしまう。決して、日常の延長線上ではないのです。自分の体力や技術を過信せずに自然に対して謙虚でいること。事故のニュースを見て、対岸の火事だと思わないこと。明日はわが身かもしれないという気持ちを持ってほしいです」