つらい時に聴くと「自分を肯定してくれる」――緑黄色社会の音楽に集まる共感
気持ちを一人で抱え込み、歌えなくなった時期も
上京後は「Mela!」を筆頭に次々と曲を送り出し、映画、ドラマ、アニメの主題歌、CMソングなどに立て続けに起用され、躍進する。多忙な日々が続いてプレッシャーも大きくなり、ある時期、長屋は歌えなくなってしまった。 「楽しいから音楽を始めたけれど、考えなきゃいけないことがどんどん増えてきて。ボーカルだからバンドの顔としてしっかりしなきゃとか、やっぱり素敵にならなきゃいけないのかなとか、見られ方まで気になり始めたり。顔や名前を出さないで活動できればよかったのに、とも思う。そのうちに、自分の歌う意味って何なんだろうと。苦しくなって、歌えなかった時期がありました。ライブ本番は何とかがんばれるんですけど、リハーサルで歌ってる途中で、声が出なくて、涙も止まらなくて」 「気持ちを誰にも話してなかったから、みんなは私がなんで泣いてるのかも分からなくて戸惑わせてしまうし。徐々に作ってしまった壁みたいなものがあって、みんなも『どうしたの?』っていう言葉をかけづらかったと思います。一人で抱え込んでしまった」
悩みながらも活動は続く。2022年7月に結成10周年を迎え、9月には、夢の一つである日本武道館でのワンマンライブを控えていた。準備する最中、長屋は新型コロナに罹患する。快復するもリハーサルに参加できたのは2日間のみ。声や体調が万全ではないなか、「やるしかない」と吹っ切れた。 「ライブの直前に、メンバー全員に思いきって話したんです。大人になりすぎちゃった感覚みたいなのが、ちょっとあって。昔みたいにラフにというか、友達ライクにやりたい、と」 その言葉はメンバーにも響いた。 「忙しいと仕事をしてパッと解散するようになって、話す時間もなくて。いつの間にか距離ができてしまっていた」(穴見) 「言ってくれて、まじでよかったです。そこから僕もすごい楽になりました」(小林)
武道館公演は10年の歩みを実感する特別なライブになった。大きな体験だったと長屋は言う。 「本当に楽しくて、自然とメンバーの顔を見ちゃった。メンバーのありがたさをかみしめながら、これからはもっと自分の気持ちを開示していきたいと思います」 あらためて関係を4人に尋ねると、「ビジネスパートナーではなく、バンド仲間」と声をそろえる。peppeはメンバーを「私の存在意義を見いだしてくれる味方」と言う。