「乳がん検診は痛い!」という人の新たな選択肢“3Dマンモ”とは?【更年期女性の医療知識アップデート講座】
痛くない3Dマンモグラフィ=トモシンセシス
従来の2Dマンモでは、白く写る乳腺組織にしこり(病変)が重なって、雪原にいる白うさぎのように病変があっても隠れてしまい、見えないことがある。 しかし、3Dマンモでは、レントゲン写真を異なる位置から撮影して、コンピュータで断層画像を合成する。透明な板で圧迫した乳房の厚さが40mmの場合、40枚の断層画像が生成される(メーカーによって撮影枚数は多少異なる)。これまでの2Dマンモでは1枚の画像で判断していた。 そのため、3Dマンモで撮影すると、CTの輪切りのような断層画像なので、乳腺と重なった病変や乳腺の中にある病変(雪原の中の白うさぎ)を発見する可能性が高くなる。 もし病変のような影が写った場合、それが良性なのか悪性なのか、それとも乳腺の歪みや重なりなのかなどの診断の精度も上がる。これまでは、2Dマンモで病変が見つかった場合、精密検査として、針を刺しての細胞診や組織診検査が行われていた。けれども、3Dだと病変の確認が行いやすく、不必要な精密検査を避けられる可能性もあるのだ。 また、従来の2Dでは、病変が見つけにくいとされていた高濃度乳房であっても、乳腺組織か、しこりかどうかの判断がしやすく、乳がんの発見率が高まるといわれている。海外のデータでは、3Dマンモを用いることで「進行がんの発見率が41%増加した」「良性疾患を正確に診断する力が40%向上した」という報告もある。
3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)は、乳房を強く圧迫する必要がなく、ふわっと押さえて画像を撮影するため、従来の2Dマンモグラフィと比べて、かなり痛みが軽減されるというメリットがある。デメリットとしては、従来の2Dマンモより撮影時間が少し長くなり、被ばく線量が多少増えるとされている。
乳房は厚みがある立体だ。従来の2Dマンモでは、1枚の画像しか撮影できないので、奥のほうの乳腺と重なってしまい、がんがあっても見えにくくなる。でも3Dマンモでは1mm間隔の断層画像なので、奥まったところにあるがんも検出可能となる。 国は現在、乳がん検診では、2Dマンモを最もエビデンスがあるとして推奨している。そのため3Dマンモは、自治体の検診などでは導入されていない。3Dマンモを行いたい場合は、3Dマンモを持っている人間ドックなどの検診施設や医療機関で行うことになる。3Dマンモのほか、MRIや超音波なども新しい機器が続々登場し、検査法は進化している。 私たち女性一人一人のニーズに合った、受けやすい検診法の導入を早く考えてほしいと思う。
取材・原文/増田美加 1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。約35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』ほか。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員 イラスト/かくたりかこ