「全部やる!ほっといて」妻を亡くした清水健が咄嗟に口にした言葉と母との同居生活で自分の弱さを認めた「あの日のこと」
息子さんが誕生して112日後に、最愛の妻を亡くしたフリーアナウンサーの清水健さん。母親と同居しながら、シングルファザーとして奮闘する日々のなかで、情けない自分に気づけたといいます。(全2回中の2回) 【写真】産後すぐに撮影した数少ない3人での家族写真や10歳になった息子と清水健さんの現在など(全11枚)
■「今日は疲れた」と気軽に言える相手がいる幸せ ── 著書の出版や講演活動など、がん患者やその家族へ向けてご自身の経験を発信していらっしゃいます。 清水さん:『112日間のママ』を出版させてもらったことは、これから大きな意味をもってくるのかなと思います。10歳になる息子は、母親のことを覚えていない。でも、僕たちは間違いなく3人でいた。『112日間のママ』には、息子の知らない母親の姿が詰まっているので。
多くの方が「こんな僕に話してくださっていいのかな」と思うようなことを話してくださいます。つらい経験を誰にも話せず、我慢している方々がたくさんいる。話してくださいね、ではなくて、話したいときに話せる場は必要なのかなと思います。僕に何かができるわけでは決してありませんが、そういう場所をみなさんと共有できたらいいなと思っています。 ── シングルファザーの会も主宰されています。 清水さん:何か特別なことをするわけではありませんが、ポロッと本音を話せることがあるんですよね。「うちはこうだったんです」と壮絶な闘病生活を話してくれたシングルファザーの仲間がいて。それをきっかけに、みんなが自分の経験を無理にではなく話すことができたことがありました。命と向き合うなかで、みんなが多くのことを悩み、後悔していることもあったり、話すことが怖かったりもする。でも、「ここでなら話せる」という空間があることは救いになります。
シングルファザーに限らず、誰もがみんな頑張っていて。でも「ああ、今日は疲れたな」というときはあるはずです。僕自身も妻がいてくれたときにそうだったように、当たり前すぎてなかなか気づけないかもしれませんが、「今日は疲れたね」と言える相手がいるって、すごく幸せなことで。いま、隣に妻がいなくなって気づくことがいっぱいあります。 ── お母さまのサポートは? 清水さん:40歳を過ぎて親と同居するとは思ってもいなかったです。母もそうだと思います。70歳を過ぎた母に頼らざるをえない現実。苦労をかけてしまっているという申し訳なさ、うしろめたさはどうしてもあります。家族だからこそ、お互いに気を使って言えないこともたくさんあるし、どうでもいいことでイラっとしてしまうこともあります。「もういい、全部オレがやる!ほっといて」と言ってしまったこともあります。できもしないのに、情けないですよね。いまは素直に「できない」「頼む」と言えるようになりました。できないことはできないですから。自分の弱さを認めることで変われたことがあると思います。