「アルコールに頼る若者や女性が増加」コロナ禍のアルコール依存を防ぐためにできる二つのセルフチェック
アルコール依存症に陥らないために――簡単にできるセルフチェック方法
――そもそもアルコール依存症とはどのような状態を指すのでしょうか。 松本俊彦: 明確なラインはありませんが、飲みすぎてはいけない状況なのに抑制ができずにコントロールを喪失してしまうのは、アルコール依存症と言えると思います。自分ではストレス解消のためにお酒で生活をコントロールしているつもりでも、気がつくとお酒に振り回されて自分が大切にしているものが次々となぎ倒されてしまっている。これは依存症の状態だと思いますね。 ――簡単にできる依存症のセルフチェック方法はあるのでしょうか。 松本俊彦: 二つのチェック方法があります。 (チェック1)飲み方・酔い方が以前と変わったか (チェック2)まる2日間お酒を飲まずにいられるか アルコール依存症になる一つの境目として酔い方の様子に変化があるかということが挙げられます。例えば周囲から「最近、飲み方が変わったよね」とか「酔ったときにすごくタチが悪いよね」と言われる人は注意が必要です。また、二日連続でお酒をやめることができるかということもチェックポイントになります。お酒の禁断症状はお酒をやめてからすぐではなく、約48時間が経過してから現れます。二日連続でお酒をやめても、イライラしたり不眠になったりすることがないかどうかというのは一つの指標になると思います。
理想的な適正飲酒量は20g未満。飲酒量を計算して予防できる
――自分の適正飲酒量を把握するためにはどのような方法があるのでしょうか。 松本俊彦: アルコール依存症にならないためにセルフモニタリングは一番大切です。「お酒の量(ml)×アルコール度数×0.8」で計算をすると、一日で消費している純アルコール量をグラム単位に換算することができます。 理想的な適正飲酒量は20g未満。一日あたり60g以上摂取すると健康問題のリスクが高まるとされているため、お酒に不安がある人はきちんと計算しながら自分の飲酒量を把握するだけでも予防になります。
SNSやゲームが役に立つ――依存症を克服するための工夫
――アルコール依存症になってしまった場合は、克服するためにどんな工夫をすれば良いでしょうか? 松本俊彦: アルコール依存症患者がお酒をやめたら摂食障害になり、摂食障害を克服したら自傷行為が止まらなくなるなど、依存対象が次々と移行することを「クロス・アディクション」といいます。 ただ、最近ではアルコールから距離をとるためにSNSやゲームなどに置き換える人も少なくありません。例えば、SNSで自分の断酒のことを毎日うるさいくらいに報告し続けた結果、応援団が増えてオンラインのミーティングを開いている人や、アイドルなどの追っかけになることでアルコールから距離をとる人など。依存の行動をよりリスクの少ないものに置き換えて、アルコール依存症を克服しようとするのはいいことだと思いますね。また、会社でも家でもない、素の自分でいられる「第三の場所」を作ることも依存症の克服には効果的だと思います。 ――自分が依存症当事者かもしれないと思ったら、どのように情報収集をすると良いのでしょうか? 松本俊彦: ネットにはたくさんの啓発的なサイトがあります。例えば厚生労働省には依存症の治療相談拠点の事業があります。ネットで「依存症対策全国センター」と検索すると、さまざまな依存症に関する啓発的な情報やチェックリストが記載されていますので、気になる方はチェックしてみるといいでしょう。 また、ASK(アスク)などの自助グループのミーティングに参加して実際に当事者の話を聞いて、自分を見つめ直してみるのもいいと思います。