「死んじゃダメ」はNGワード 身近な人から死にたいと相談されたら気をつけたいこと
「死にたい」――身近な人からそんな相談をされたら、あなたはどうしますか? 慌てて「死んじゃダメだ」「生きてたらいいことがあるよ」などと説得することは、実は相手の気持ちを否定し、追い詰めてしまうことになりかねないそうです。ではどのように受け止め、接すればいいのか、毎月300人以上の人の心の声に耳を傾けている精神科医・井上智介医師に話を聞きました。(Yahoo!ニュースVoice)
自殺者数の報道が及ぼす影響とは
毎年、年間自殺者数の統計データが発表されます。その時に注目されるのは、去年より増えたのか減ったのかということですが、普段から生きづらさを抱えている人にとって、そういった増減はどうでもいいことです。それよりも、毎年のように多くの人が自殺を選んでいるのだという事実こそが、とても大きな影響を与えてしまいます。 死にたいという気持ちを抱えている人は、もうすでに八方塞がりの状況にあることが多いのです。自分のやりたいことができない、なりたい姿に近づくことができない、何もかもうまくいかない。そんな無力感に、ひどく苦しんでいます。 そのような時は大変視野が狭くなっている状態のため、極端な思考をしてしまうことがあります。今のつらい思いから解放されるための唯一の方法は死ぬことである、と思い込んでしまうのです。もちろんこれは、決して正しい考え方ではありません。しかし、報道による「多くの人が自殺を選んでいる」という事実を知ることによって、思い込みが正当化されてしまうことがあるのです。
死にたいと相談されたらどうする?
もし突然、身近な誰かに「死にたい」と相談されたら、冷静に対応できる人はなかなかいないと思います。知っておいてほしいのは、死にたいという気持ちを漠然と抱えている段階と、今すぐに死んでしまうという段階には、大きなタイムラグがあるということです。即行動というパターンは多くありませんので、慌てすぎないようにしてください。 つい慌てて「死んだらダメだよ」と言いたくなってしまう気持ちは、とてもよくわかります。でもそれは、相手の行動をコントロールしようとしていると受け取られることがあるのです。私たちは自分の行動を誰かにコントロールされることがとても嫌なことだと、身をもって知っていますよね。また、誰かにコントロールされていると感じると、逆の行動をとりたくなってしまうこともあります。ですので、「死んではダメだよ」という声掛けはあまり有効ではありません。 同じく「生きてたらいいことがあるよ」とか、「誰にだってつらい時はあるよ」といった声掛けも適切ではありません。それは、相手が抱えているつらい気持ちに寄り添っている声掛けではないんです。自分の気持ちや存在を否定されてしまったと感じてしまいかねません。 そして何より、今その言葉で立ち止まってくれたとしても、次につらくて死にたい気持ちになった時に、あなたに対してSOSを出してくれなくなってしまいます。そうなると止めることができませんので、声掛けには充分注意してください。