「光る君」衣装デザイン 手探りで決めた平安のイメージカラー 日本画家、諫山宝樹さん
■広がる仕事の幅 縁がつないだ奉納
NHK大河ドラマ「光る君へ」の衣装デザインを担当し、注目を集めた諫山宝樹さんは現在、寺社に奉納する絵や自身の作品発表に軸足を移し、精力的な活動を続ける。
生國魂神社(大阪市)の近くで育ち、鎮守の森が遊び場だった。「近くにお寺や神社、森とか川がないと生きてる心地がしない」。寺社の美術作品も身近な存在だ。奉納の第一歩となった大徳寺塔頭(たっちゅう)・聚光院(京都市北区)の唐子の襖絵が話題を呼び、あちこちから声がかかった。そのうちの一つが沢庵(たくあん)和尚ゆかりの寺として知られる宗鏡寺(すきょうじ)(兵庫県豊岡市)。たくあん漬けから逃げ出した大根が、好き勝手やらかすユーモアたっぷりの描画の襖絵を制作した。
その後も清水寺や八坂神社(いずれも京都市東山区)、金峯山寺(きんぷせんじ)(奈良県吉野町)などに奉納した。「私、自分で何も決めてへん。人の縁がずっとつながっていろんな仕事の幅が広がっていく」
修験道の聖地、金峯山寺では、本尊の青い金剛蔵王大権現3体を描いた。コロナ禍の令和3年に丸1日、本尊と向き合ってスケッチした。荒々しい憤怒の形相だが、実は慈悲と寛容に満ちあふれている。
山頂の宗教都市にすっかり魅了されて昨年秋、金峯山寺で仏縁を結ぶ「結縁灌頂(けちえんかんじょう)」を受けた。3体の蔵王大権現は過去、現在、未来を表す。結縁灌頂の儀式で、目隠しをされて手を引かれるままに本堂内陣をぐるぐる歩き、目隠しを取られたとき、現在を表す大権現が目の前に突如現れた。思わず「ギャー」と声が出た。そのころ大河ドラマの仕事が佳境を迎えており、「権現さんが背中を押して『今を頑張れ』って言っているのだろう」と、腹をくくった。
金峯山寺は大河ドラマの主人公、藤原道長ともゆかりが深い。道長は寛弘4(1007)年、同寺に参詣し、経筒に自筆の経典を入れて埋納した。「こんな偶然はない。これもご縁」。ドラマのチーフ演出の中島由貴さんを同寺に案内すると、ドラマでは道長の参詣シーンがしっかり描かれた。「少しは役に立ったかな」