「光る君」衣装デザイン 手探りで決めた平安のイメージカラー 日本画家、諫山宝樹さん
昨年9月には、豊臣秀吉の正室、北政所(ねね)が創建した高台寺(京都市東山区)に、若き日のねねと秀吉の肖像画を奉納した。「うちの寺に作品を納めた人は生きてるうちは報われへんのですけど、死んだらみんな評価されるんです。そんなんでもよろしか」。高台寺前執事長の後藤典生(てんしょう)さんにこう口説かれた。「めっちゃおもしろい」。20~30代の若々しいねねと秀吉を描いた。
後藤さんはさらに、「この肖像画は100年後には文化財になる。複製を作って、(原本は)寺宝にする」と明かした。国宝や重文などの文化財は、保護の観点から高精細複製品が作られることが多いが、現代作家の複製は聞いたことがない。「驚きました。それだけ大切にされている。ありがたいことです」と襟を正す。
「私のことを意識していない不特定多数の人の目に触れられる状況での作品展示に喜びを感じます」と話し、絵の持つ公共性を大切にしたいと強調する。「次にやりたいことをよく聞かれるのですが、実はよく分からない。絵を描いて暮らせたらいいな」。いたずらっぽくほほ笑んだ。(田中幸美)
いさやま・たまじゅ 昭和55年、大阪市生まれ。平成17年、京都市立芸術大大学院保存修復専攻修了。大学院時代から東映京都撮影所で時代劇の襖絵(ふすまえ)や掛け軸などの美術制作に携わり、27年に独立。NHK大河ドラマ「光る君へ」では衣装デザインを担当し、登場人物の衣装の色合わせを考案するだけでなく、劇中の屛風(びょうぶ)絵などの制作も行った。「宝樹」は雅号で、本名は恵実。