ファンで賑わう浪花の格闘技バー。ママは元アジアボクシングチャンピオン
ボクシングのきっかけは夫婦げんか
燃え尽きたい……。そんな思いを胸に秘めてボクシングを続けるABCOアジア女子スーパーフライ級のチャンピオンがいる。浪花のママさんボクサーこと、森本圭美(もりもとたまみ、47歳)さんだ。結婚して3児をもうけ、大阪府枚方市で飲食店を経営していたが、少林寺拳法の心得がある夫との夫婦げんかがきっかけで、もっと強くなりたいとアマチュアジムに入門してグローブをはめた。40歳の時だ。その後、日本では年齢制限で(36歳まで)プロアマとも試合ができず、タイでプロになることを決意した。「趣味でやるには子供に申し訳なくて。その間、子供をほったらかしにするわけやし。だから私は選手になりたかった。そしたら子供もわかってくれる」
45歳でチャンピオンベルトを獲得
そして2009年5月、17歳の選手をKOで沈めプロデビューを飾った。翌年2月には、WIBAインターナショナルフライ級タイトルマッチに挑み、善戦したが判定負け。この試合がタイのプロモーターに認められて日本人選手として契約、3月よりリングネームを「タマミ・トー・ブワマーッ」とする。2012年8月21日、45歳の時、タイで行われたABCOアジア女子スーパーフライ級王座決定戦で、強敵を下してチャンピオンベルトを獲得した。現在もベルトを所持しているが、防衛戦は一切していない。「まだ王者のまま。ずっと防衛戦をしてもらわれへんねん。タイで試合をしないといけないし、スポンサーがおらへんかったら試合を組んでもらうのは難しいんですよ。興行的な問題です。ただ、私は今のタイトルにこだわってはいない。たとえば、アメリカとか行って自分が挑戦者であってもいいから、違うタイトル戦に挑む、そういう道を模索している」
試合ができるのがうれしい、でも負けたら終わり
そんな時、中国での試合(3月28日)のオファーが舞い込み、引き受けた。 「ノンタイトル戦でした。今回、ファイトマネーが初めて出てるねん。出てるねんけど、交通費込みやし、タイのプロモーターの分もあるし、私には残らない。それでもタイ以外の国に行けるので、すごいウキウキしてました。試合ができるっていうのがめっちゃうれしくって。でも、負けたら終わり」 出国前、彼女は自身が経営する大阪・ミナミにある格闘技鑑賞バー『リングサイド』のカウンターの中で、そう語った。 「戦略なんかない。そんなもん、毎回、ないよ。毎日2時間練習を続けているけど、減量も大変やし。勝ち負けじゃないねん、燃え尽きたいだけ。まず私はタイの選手ですから、日本ではビジネスにならない。日本のライセンスを持ってないし」とも、本音を吐露した。