長州力を襲撃した怪覆面X「渕正信」が激白「馬場さんに言われたのは2、3日前」「元子さんにも…」
【プロレス蔵出し写真館】今から40年前の1984年(昭和59年)12月4日、香川・高松市民文化センターで第4の団体〝長州力の〟ジャパンプロレスが旗揚げした。「長州軍団の夜明け」と銘打ち、チャリティー特別試合として開催された。 【写真】長州にチョーク攻撃を仕掛ける謎の怪覆面X 長州らジャパン勢は、この年の9月20日、大阪での試合を最後に新日本プロレスを離脱。75日ぶりにリングに帰ってきた。。この日、長州はエキシビションマッチを行うことが決まっており、その対戦相手が誰なのか注目を集めた。開場の1時間前に1000人近くが並び3500人(満員)と、予想以上の観客が詰めかけた。 高知で試合が組まれていた新日プロでは坂口征二副社長が東スポの記者をつかまえ「長州の相手は誰になった?」と逆取材。全日本プロレスの試合地・博多でも「長州の相手は決まったか?」。相手探りで盛り上がっていた。全日プロではひとり、渕正信が欠場していることが判明し、現場の記者は東京のデスクに報告を入れた。「ふーん」。素っ気ない反応だった。 渕は前日3日の千葉大会でマイティ井上と組み、ハーリー・レイス&ニック・ボックウィンクル組と対戦。ニックのパイルドライバーとレイスのブレーンバスターを食らい、負傷して欠場していた。 高松では、長州が「オレの相手は誰だ? 新倉(史祐)、お前とやるか」。軽口を叩くほど機嫌がよかった。 さて、いよいよ長州の試合になり、先に新倉がリングイン。続いて長州が登場して、リングアナのコールに右手を突き上げるいつもの風景。まさに試合が始まろうとしたその時、南側壇上にイスを手にしてスキー帽をかぶった謎のレスラーが姿を現した。赤のアメフト風コスチュームに赤いタイツとシューズ。赤のサポーター。館内は騒然だ。 謎の怪覆面Xはリングに近づき長州を挑発。タイガー服部レフェリーがスキー帽を脱ぐよう促すと(写真)、その下にはマシーン軍団そっくりの赤いマスクをかぶっていた。 怪覆面Xは新倉に襲いかかり、排除してから長州と対峙した。急きょ、対戦が決まってレフェリーチェックを受ける長州に怪覆面Xがタックルの不意打ち。倒れた長州に首絞めのチョーク攻撃。さらにタックルを見舞う。長州も反撃してラリアートからショルダースルー。電光石火のリキラリアートを叩き込み、ガッチリとサソリ固めで捕獲した。 ギブアップしない怪覆面Xに、これ以上は危険と判断して服部レフェリーがストップをかけ、試合はわずか95秒で決着した。若い選手に担がれて退場する怪覆面X。長州はそれを目で追っていた。 ところで、2年前に木原文人リングアナのユーチューブで、怪覆面Xは自分だったと明かしたのは渕正信だ。 改めて渕に当時のことを聞いた。 ――ジャパンに出るよう言われたのは 渕…馬場さんに言われたのは(3日の千葉大会の)2、3日前かな。(高松には)ひとりで行った。チケットもらって、飛行機と電車乗り継いで。正体は絶対わからないようにしてくれって言われたから、アメフトの格好したんだよ。覆面の下にパンダみたいに目の周り真っ黒にしてね。元子さんにも「渕君は元気よすぎるから」(正体がバレるんじゃ)とか、いろいろ言われたのを覚えてるよ。 ――長州とやるのは決まってた 渕…そうだよ。実際、サソリ固めは苦しかったよ。力込めて腰落としてたから。こんな短い時間でギブアップするのはヤダなと思ったから、もう必死の気持ちで耐えたよ。レフェリーストップにはがっかりした。長州力がリング上で「まだ来い」って言ってたと思うんだよね。 ――試合が終わって 渕…大塚(直樹社長)さんが車呼んでくれて、(待機していた)タクシーでホテルまで(帰った)。ホテルに上等な寿司が届けられたよ(笑い)。大塚さんとはいまだに関係が続いてるっていうか、仲良くしてもらってる。大塚さんは「(旗揚げに)渕選手がいいんじゃないか?って俺が言った」っていう話をするんだけどね。 ――翌5日の全日プロ熊本大会には出場してます 渕…多分、東京から行ったと思うんだよね。迎えにもタクシーが来て朝一で、もう早~い時間に東京に戻った。顔が知れたらいけないし3、4時間ぐらい寝ただけだよ。 ――改めて振り返ると? 渕…(今でも)怪覆面Xがどうのこうの言うんだけど、試合時間が短いし…。そのあとジャパンの興行(12月13日、後楽園ホール)でマイティ井上、渕組対アニマル浜口&谷津嘉章組でやった試合は、10何分かやって(11分26秒)、浜口さんにオレが取られたんだけど、パートナーの井上さんも張り切ってたし結構評判よかったんだよね。大塚さんが認めてくれて、なおかつ馬場さんが了承したっていう感じであったから。日本人同士でやるってことで励みにもなったし、まぁいい思い出だよな。 渕は、懐かしそうにそう語った(敬称略)。
木明勝義