米FRB利上げペースダウン、パウエル議長会見に見えた変化
米FRB(連邦準備制度理事会)が利上げ幅を縮小させました。年内の利下げ観測がある中で、パウエル議長は会見でどう語ったのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】“一枚上手”だった日銀 今後の金融緩和は? 住宅ローンは? 政策修正めぐる5つの「Q」
パウエル議長「ディスインフレの兆候」
2月のFOMC(米連邦公開市場委員会)は大方の予想通り0.25%の利上げを決定し、FF金利(誘導目標レンジ上限)は4.75%とされました。FRBが公表した声明文には、将来の政策指針について「継続的な利上げが適切(ongoing increases)」という文言が引き続き記載されました。利上げの終着点が近づいているという認識がFRB内外で広がる中、この文言が削除・変更されるとの予想も一部にありましたが、FRBは追加的な利上げ方針を維持しました。 その反面、パウエル議長の記者会見は筆者の想定ほどタカ派的(金融引き締めに積極的)ではなく、寧ろハト派的(金融緩和に前向き)な一面すら垣間見えました。過去1カ月ほど株価高・金利低下が勢いづいていたことから、筆者はパウエル議長がそうした楽観的な動きを牽制してくると警戒していましたが、パウエル議長はインフレ高進に対する警戒感をやや弱めると共に「(一部の財・サービスについて)ディスインフレ」の兆候があると言及しました。 ディスインフレとは「インフレ率が低すぎる」ことを問題にする文脈でよく使われる言葉なので、この単語を選んだことに驚いた専門家は多かったはずです。筆者は次回3月FOMCで0.25%の利上げが決定され、それが今回の利上げ局面における終着点(ターミナルレート)になるとの予想に自信を深めました。その後、インフレ率の鈍化を見極めた上でFRBが年内に利下げを開始すると予想しています。 パウエル議長(及び声明文)は「継続的な利上げが適切と引き続き想定」という従来の見解を維持しました。労働需給が著しく引き締まった状態にある中、賃金上昇率が高まっていることなどから、インフレ率は依然高止まりしているものの、その度合いは「幾分鈍化した」との認識が示されました。その上で「財」と「住宅」についてはディスインフレが始まったとの見解が示されました。また「著しい経済の落ち込みを経験せず、インフレを2%に回帰させる道筋は存在する」としてソフトランディングに一定の自信をみせました。