コロナ禍に円安…でも意外に悪くない? 日本経済と日本株
コロナ禍からの景気回復の遅れや歴史的な円安に苦しむ日本経済ですが、欧米を逆転し、相対的優位を示す指標があるといいます。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】英トラス政権の大型減税が「トリプル安」誘発…ここから学べることは何か?
企業景況感指数が欧米を逆転
代表的な企業景況感指数である10月総合PMI速報値は日本(51.7)、米国(47.3)、英国(47.2)、ユーロ圏(47.1)という結果になりました。この指標は各国同一の手法で調査され、毎月公表されます。一般的に指数が50を上回ると、企業活動が「前月から改善」していることを意味します。2021年の平均値は米国(59.6)、英国(55.9)、ユーロ圏(54.9)といずれも50をはるかに上回っていたのに対し、日本は49.4と弱さが目立っていましたから、10月の数値は対照的な姿となりました。
2021年まで、欧米諸国はインフレの混乱がさほど問題にならない中で政府・中央銀行の景気刺激策が発現し、経済活動は活況を呈していました。しかしながら、2022年に入った後は、ペントアップデマンド(パンデミックによって先送りされた需要。典型例は旅行・外食)の減少、高インフレによる混乱、中央銀行の金融引き締めによって経済活動は急速に落ち込んでいます。 この間、日本経済は遅々としながらも回復を続け、総合PMIは安定的に50を上回るようになっています。サービス消費は輸入物価上昇にもかかわらず持ち直しを続け、製造業も自動車生産の回復などに支えられ底堅く推移しています。パニック的なインフレに直面していない日本では、日銀がインフレ退治を主目的とする金融引き締め策を講じる必要がなく、経済活動が阻害されていない点も大きいと考えられます。
サービス消費が持ち直す
日本の10月製造業PMIは50.7と2021年2月以降、21カ月連続で50を上回っています。欧米経済の減速を反映して輸出向けが停滞する反面、サービス消費の持ち直しで国内向けの生産活動が底堅さを維持しているものとみられます。サービス業PMIは53.0へと回復しました。仕入れ価格上昇や人手不足が足かせとなるものの、ペントアップ需要が発現する中、政策支援(全国旅行支援、燃料価格激変緩和補助金)にも支えられた形です。 PMIから判断すると、新型コロナ感染の第7波によって下押しされた個人消費は足もとで回復経路に復していると考えられ、消費活動指数(日銀作成)は8月に低下した後、9月は回復したとみられ、その流れは10月以降も継続が期待されます。低水準ながらも需要者としてのサービス業が息を吹き返し、それが製造業に恩恵をもたらすという好循環が生まれつつあるようです。