順調なインフレ鎮静化 近づきつつある?米利上げ終了
11月の米消費者物価指数の結果はインフレが落ちつきつつあることを示したと第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストは言います。米FRB(連邦準備制度理事会)は12月14日に政策金利を0.5%引き上げることを決めましたが、利上げペースは鈍化しました。今後の利上げはどうなっていくのでしょうか。 【グラフ】コロナ禍に円安…でも意外に悪くない? 日本経済と日本株
消費者物価指数は今後さらに減速する?
12月13日に米国の11月米CPI(消費者物価指数)が発表されました。結論を先取りすると、CPIはエコノミストの予想以上に減速し、インフレ沈静化が順調であることを示しました。総合CPIは前月比+0.1%、前年比+7.1%と、前年比でみると依然として高い伸び率でしたが、インフレの瞬間風速を示す前月比の数値は10月の前月比+0.4%から減速しました。 瞬間風速が和らいだ理由としては「食料品」が前月比+0.5%とやや落ち着いたほか、「エネルギー」が前月比▲1.6%とマイナスに転じたことがあります。また食料・エネルギーを除いたコアCPIが前月比+0.2%、前年比+6.0%へと減速したことも重要です(10月のコアCPIでは前月比+0.3%、前年比+6.3%)。 コアCPIの内訳に目を向けると、「財」は前月比▲0.5%と2か月連続マイナスでした。サプライチェーンの復旧を受けて新車の供給が回復傾向にあることなどから、中古車価格が下落に転じ、耐久消費財の価格が落ち着いたことが背景にあります。他方、「サービス」は+0.4%と過去数か月のペースから小幅に減速したものの、家賃の著しい上昇を主背景に依然として上昇傾向にあります。 ただし、ここで押さえておくべきことは“消費者物価指数における家賃”は“リアルタイムの住宅価格”に比べて遅効性があることです。そこでリアルタイムの住宅価格を示すケース・シラー住宅価格指数(或いはZillow住宅価格指数)に目を向けると、既に家賃のトレンドは明確に下方屈折しています。現在、消費者物価指数ベースの家賃は上昇傾向を強めており、インフレのけん引役となっていますが、ここから判断すると、2023年に入った後には消費者物価指数ベースの家賃も下落が予想され、全体のインフレ率を下押しすると期待されます。 米国の物価動向については、水準そのものは依然として高く、また今後も(人手不足に伴う)労働コスト増加に起因するインフレ圧力はなお強く残存すると見込まれますが、原油など国際商品市況が落ち着いているほか、耐久消費財(中古車等)の下落が続き、家賃に起因するインフレ圧力が今後和らいでいくと予想されることから、全体として一段の減速が予想されます。