じつは、怖い思いをしたから…危ないと止められている…つぎの登山を「もっと快適で安全」にするための「意外な視点」
登山人口は年々増加の一途をたどり、いまや登山は老若男女を問わず楽しめる国民的スポーツになっています。いっぽう、登山人口の増加に比例して山岳事故も増えており、安全な登山技術の普及が喫緊の課題となっています。 【画像】減量に、体力低下予防…運動生理学で判明。月イチ軽め登山「驚愕の運動効果」 運動生理学の見地から、安全で楽しい登山を解説した『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)から、特におすすめのトピックをご紹介していきます。 今回は、安全に登山を楽しむポイントと、そのために必要な知識をご紹介していきます。 *本記事は、『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
古来より登山を愛した日本人
登山は、日本で最も愛好者の多いスポーツの一つです。その数は1000万人に近いという調査結果もあり、世界で最も登山が盛んな国の一つと言ってもよいのです。 またその歴史も、世界で最も古いのです。近代登山は18世紀にヨーロッパで始まりましたが、日本ではそれよりもずっと昔から、信仰や行楽のための登山が行われ、老若男女を問わず山に親しんできました。 日本人が登山を愛する理由は、全国どこへ行っても個性的で素晴らしい山がたくさんあるからです。日本は山国で、火山国でもあり、亜寒帯から亜熱帯まで連なる細長い島国です。このため四季があり、春夏秋冬、山は装いを変えて私たちを迎えてくれます。日本の古称「ヤマト」は、山=ヤマが語源となっているとも言われています。 現代の登山者に山を登る理由を訊たずねてみると、「自然を求めて」「健康・体力づくり」「仲間との交流」をあげる人がほとんどです。この3つは現代社会で失われがちなものですが、山に行くことによって、それらを取り戻すことができるのです。山が好きな人に訊ねれば、そのよさを各人各様に語ってくれることでしょう。
事故が多いスポーツでもある
そのいっぽうで、登山は苦しい、つらいと言う人もいます。また事故を連想して、危ない、恐いと思っている人もいるでしょう。じっさいに、登山者の数が多いことに比例して、事故も多いのが現状です。登山は、適切に実行すれば素晴らしい生涯スポーツとなる反面、不適切なやり方をすればマイナスの結果を招くこともあるという、両刃の剣(もろはのつるぎ)のような性質があるのです。 事故にいたらないまでも、「上りで心肺が苦しい」「下りで脚がガクガクになる」「筋肉痛」「膝や腰の痛み」など、登山の快適さを損なうトラブルを起こしている人はたくさんいます。 それらに悩まされずに歩くことができたら、登山がどんなに楽しくなるでしょう。それはまた、事故を防ぐことにも直結します。