じつは、はるかに離れた「2大陸で発見」されている…出現と広がりの「謎に光をあてる」アラスカで発見された「あまりに良好な状態の化石」
【シリーズ・小林快次の「極北の恐竜たち」】 今から何千万年も昔に、地球の陸上に君臨していた恐竜たち。シダ類やソテツ類の茂った暖かい地域で暮らしていたイメージがあるかもしれないが、彼らは地球上のあらゆるところに進出していた。南極大陸からも、北極圏からも恐竜の化石は発見されているのだ。 【画像】あまりに状態の良い化石…頭蓋復元で視聴覚を再現。驚くべき生態を予測する この連載では、北極圏のアラスカで15年以上にわたって調査を続ける筆者が、極圏での厳しい環境で、どのように恐竜たちが暮らしていたのか、その生態と進化の謎に挑むーー今回は、パキケファロサウルス科の恐竜についてのトピックをお届けします。 その化石は、これまで北米大陸、とくにカナダで多く発見されていますが、アラスカでも発見され、その状態の良さから、新たな事実が見えてきました。そして、分布拡大に関する重要な示唆も得られます。
堅頭竜類パキケファロサウルス
パキケファロサウルス類の化石は、2005年にGangloffによって報告された。ここでは、パキケファロサウルス類について簡単に説明する。 パキケファロサウルス類(Pachycephalosauridae)は、鳥盤類に分類される恐竜の仲間で、北アメリカ西部(アラスカを含む)やアジアの一部の地域に生息していた。 この恐竜の化石は、約7,000万年以上前の地層から発見されており、「ドームヘッド恐竜」とも呼ばれる。日本語では堅頭竜類という名でも知られる。特徴は、頭がドーム型の硬い骨で覆われていることである。ただし、ほとんどの化石は頭の上の部分しか残っておらず、分類が難しいことが多い。 パキケファロサウルス類のもっとも大きな特徴はこのドーム型の頭であり、これは頭突きのような行動に使われ、縄張り争いや求愛の際に優位を示す手段だったと考えられている。 アラスカで見つかったパキケファロサウルス類の化石は、コルビル川沿いの崖のふもとの河岸で発見された。この崖は、固まりきっていない砂岩やシルト岩、泥岩からできており、プリンスクリーク層と呼ばれる地層に含まれている。その上には第四紀の堆積物が積み重なっている。この地域では、ハドロサウルス類の化石も多く見つかっている。 化石が見つかった地層には火山灰が何層も含まれており、放射年代測定によってこの地層の年代が約6800万年から7100万年前と特定された。さらに分析を進めると、最も下の層は約7100万年から7200万年前であることがわかった。これらのデータから、アラスカで見つかったパキケファロサウルス類の化石は、白亜紀後期のカンパニアン期に属するものであると考えられている。