生き残るのはどこ?!清水、徳島、湘南の熾烈なJ残留争いはついに12.4最終節で決着へ
12月4日に待つ最終節。湘南と徳島に勝ち点で3ポイント差をつけた清水は、ホームにセレッソを迎える90分間で引き分け以上ならば残留を決められる。2試合連続で無失点に封じている守備陣も加味すれば、最も優位に立ったと言っていい。 J2の4位から勝ち上がった2019シーズンのJ1参入プレーオフ決定戦で、J1で16位だった湘南相手に先制しながら引き分け、レギュレーションにより昇格を逃した徳島は同じスタジアムで借りを返した。当時を戦った湘南出身の岩尾は言う。 「個人的なところでは思い残すところもあったし、ピッチでの借りはピッチでしか返せない、という意味では非常にいいゲームができたと思っている」 もっとも勝ち点こそ「36」で並んだものの、得失点差では湘南の「マイナス5」に対して徳島は「マイナス19」と大きく後塵を拝している。3チームのなかでは最も厳しい条件下に置かれているだけに、岩尾は「現状ではまだ何も得ていない」と表情をほとんど変えずに、ホームのポカリスエットスタジアムに広島を迎える最終節を見すえる。 「ホーム最終戦で勝ち点3を全員でつかみ取り、あとは天命を待つという状況を目指しながら、この1週間をいい準備にあてていきたい」 ホーム最終戦で苦杯をなめた湘南は、前節まで2勝3分けと5戦連続で無敗を続け、さらに得失点差で優位に立っていた状況から、たった一戦で窮地に追い込まれた。 「してやられたというか、状況を把握できていなかった。防げた失点だった」 デザインプレーから喫した失点場面で、ファウル覚悟で岸本のユニフォームを背後から引っ張ったDF舘幸希は、徳島戦へ向けた準備期間をこう振り返った。 「オリの報せを聞いて、チーム全体の気持ちとしては本当にどん底まで落とされたというか、盛り上げてやっていこうということがなかなかできない状況でした。もちろん僕たちの戦いは続いていくし、そのなかで残留に向けてこの試合に準備してきたつもりでしたけど、正直、メンタル的には厳しい部分はありました」 舘が言及した「オリ」とは、急性うっ血性心不全でまだ23歳の若さで、23日に急逝したブラジル出身のMFオリベイラさん。両チームの選手たちの左腕に黒い喪章が巻かれ、スタジアム内に献花台が設けられ、キックオフ前には黙祷が捧げられた特別な一戦を、舘は「気持ち的に少し守りに入ってしまった」と悔いを込めて振り返る。 9月から指揮を執る山口智監督も「難しい時間を過ごしてきた」と選手たちの心中を慮るなかで、キャプテンのMF岡本拓也は敵地パナソニックスタジアム吹田へ乗り込み、期限付き移籍で加わっている関係で谷が出場できないガンバ戦へ必死に前を向いた。 「もっと自分たちらしく戦うべきだった、という話をみんなにはした。これまでも逆境を乗り越えてきたチームであり、リバウンドメンタリティがあるチームだと思うので、そこを大事にしてもう一度ひとつにまとまって、ベルマーレらしく戦いたい」 17位以下の4チームが自動的に降格する今シーズン。大分トリニータ、ベガルタ仙台、横浜FCがすでに涙を飲んでいるなかで、清水、徳島、湘南のさまざまな思いが交錯する最終節は、12月4日午後2時に運命のキックオフを迎える。 (文責・藤江直人/スポーツライター)