イスラム的な「都市化の反力」はどこに向かう? 「境目の国」アフガニスタンを考える
8月15日。タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧し、同国の実権を掌握しました。アメリカ同時多発テロ事件(2001年)をきっかけに始まったアメリカ軍のアフガニスタン侵攻によって、一度は権力の座を失いましたが、20年ぶりに奪還した形となりました。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、アフガニスタンについて「まさに境目の国」といいます。境目の国の情勢は、世界にどのような影響を及ぼすのでしょうか? 若山氏が独自の視点から論じます。
境目の国
タリバンが、アフガニスタンの実権を掌握した。 今は穏健な立場を強調しているが、本来、厳格なイスラム法に従う思想である。敵対した人々に対する怨念もあるだろう。個人の権利と女性の自由は著しく制限されると思われる。世界では民主と自由の理念が後退しているということか。20年前のタリバンによるバーミヤン磨崖仏の破壊が思い起こされる。世界の文化遺産がイスラムの偶像崇拝禁止の教義に触れることを意味したのだ。何より、タリバンのメンバーのほとんど(そう見える)が性能の良さそうな銃を手にしていることが不気味である。 その民主と自由を標榜する国々に包囲されているかたちの中国は、さっそく、アメリカを批判しながらタリバンとの関係を模索した。しかし同じイスラム教徒のウイグル人を拘束していることもあって、この政権をもっとも警戒しているのが中国だ。 アフガニスタンに国境を接するのは、北はタジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンといった遊牧民の国々、南はもとはインドであったパキスタン、西はイラン(ペルシャ)、東は中国ともわずかに国境を接している。広義においては中東に入るが狭義においては入らないとされる。 つまり西アジアと東アジアの中間に、また中央アジアと南アジアの中間に位置する、まさに境目の国なのだ。東洋と西洋の接点といえばトルコのボスポラス海峡を思い浮かべるが、それはヨーロッパ側の見方であって、ユーラシアの東と西の接点はこのアフガニスタンというべきかもしれない。 日本からは遠い国であるが、ここで僕の専門研究の一つの柱である「世界の建築様式の分類と分布」という点から、アフガニスタンの風土と文化の地政的な条件を考察してみたい。