最悪の事態は「トーキョーパンデミック」? 「不公平」五輪、強行開催なら「白いメダル」を
東京オリンピックの開会式まで2か月を切りました。しかし、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長がパンデミック下のオリンピックについて「普通はない」と発言するなど、開催について否定的な立場の人も少なくありません。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、今回のオリンピックを開催するとすれば「きわめて不公平なオリンピックになる」と指摘します。それでも開催を強行する場合は「白いメダルを」といいます。若山氏が独自の視点から論じます。
違約金と国民の命の天秤
ジメジメとした雨天がつづいた。外国人が日本で一番苦手なのは、この梅雨どきの湿気と真夏の暑さだという。しかも近年は異常気象で、豪雨や猛暑で亡くなる方も多い。そもそもそんな季節に世界から人を集めようというのは風土を軽視する行為だと思っていた。しかも今はコロナ禍である。 たしかに新規感染者は減少気味で、オリンピック関係者が開催に向けて意気込むのも無理はない。外国からの選手団も入り始めて、大半が反対であった国民のあいだにも「開催もやむなしか」という空気が広がり始めたように思える。 とはいえ感染症の専門家はほとんどが反対だ。温厚で知られる新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も、オリンピック開催に対して専門家らしい反骨を示し、政治家からはその発言に異論もあがっている。絶対賛成なのは、オリンピック関係者と与党政治家とイベントでもうける企業ぐらいのものだろう。 しかし決定権はIOCにあるという。日本側から中止をいい出せば、場所を提供するという契約に違反して莫大な違約金を取られるという話も聞く。バッハ会長は「ボッタクリ男爵」と異名をとる人だ。まるで国民の命と違約金が天秤にかけられて、1日の感染者数がその「針」になっているような気がする。こんな決め方でいいのだろうか。 そしてそこに一つ欠けている視点があるように思える。全世界の人々の命の危険性である。