「胸が苦しくなる」のは体からのSOS...心身の疲労が取れる全身ストレッチ
なんだか気持ちがモヤモヤする。すぐにネガティブな感情が湧いてくる...。こんなときは、頭で考えるのではなく、体に目を向けてみましょう。マイナスの感情を切り替えたいときに効く、体にフォーカスした心身のほぐし方を鍼灸師の大沼竜也氏が紹介します。 【イラストで解説】体の力みが抜ける呼吸法 ※本稿は、大沼竜也著『心と体のコリをほぐすセルフリセット』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。
胸は「情」の中枢である
明日のことを考えるとき、仕事の人間関係を思い出したとき、恋愛に悩んだとき、過去の嫌な出来事がフラッシュバックしたとき、胸が苦しくなる――。 胸という場所は「ハート」というように、あたたかくなったり、ぽっかり穴が空いたり、苦しくなったり、傷ついたり、実に多彩な感覚を覚える部分です。 心が疲れたときに起きる体の症状として、上位3位にランクインするくらい「胸が苦しくなる」は臨床でもよく聞きます。それだけ人間には欠かせない、何か重要な要素を占めている場所であることは間違いありません。 この胸は、日本古来の見方で「情」の中枢と考えられていました。情というのは、ざっくりといえば「人間味」といえます。単に体の部位としてここを指す場合は「胸」、精神的な意味合いを含めて指す場合は「ムネ」と表します。 「ムネ」への印象は、どこか人間の遺伝子レベルまで浸透している節があります。例えば漫画では、実写で表現できないようなデフォルメをして、キャラクターの特性を表します。情に厚い、熱血、頼りがいがあるなど、人間味に溢れたキャラクターは、「ムネ」が目立つように描かれる特徴があります。「ドラえもん」のジャイアンは、その典型的な例ではないでしょうか。
手と呼吸で「ムネ」をあたためる
そのような「ムネ」に近い部位が苦しくなるのは、「相手からのエネルギーを受け取る準備ができていない」と捉えることもできます。 例えば、他人はあなたに、好意や応援、期待というエネルギーを注いでくれます。ですが受け取る器が整っていなければ、それをためておくことができません。 もちろん、あなたが人に対して注ごうとした場合も、思っているように人を愛せなかったり、あたたかな気持ちを向けられなかったりします。 大人になるにつれ、ストレスが少しずつその器を壊していったのだとすると、昔の自分とのギャップに違和感を覚えるでしょう。中には「私ってこんなに冷淡だったっけ?」とつらくなる人もいます。 このあたたかな気持ちや情熱をためておく器が崩れるということは、身体的にみると、胸を構成する「肋骨」や「胸郭」が疲弊していたり、何らかのダメージを受けている可能性があります。 つまり、体にアプローチすることで、心理的な胸の苦しさは解消できるのです。心がそのまま形になったような「ムネ」は、呼吸に大きく関わる肋骨の中に位置します。そのため、呼吸でアプローチするのが最も簡単です。 まず片方の手で胸をさすり、さすったところがほんわかあたたかくなるイメージを持ちます。胸の少し上側をさすってふわーっと。少し下側、全体をさすりながらふわーっと、あたたかくときほぐれるようにさすります。 ある程度胸の意識が高まったら、胸に手をやさしくピタッと当てたまま、胸の内側を膨らますように、張りが出るように息を吸い込んでいきます。 難しいと感じる方ほど力が入りやすいもの。大切なのは、ここでも全身をだらっとすることです。うまく胸の位置に気持ちよさが感じられると、胸の苦しさが取れると同時に、心理的なつらさも軽くなるのがわかると思います。